フランス・フットボール通信BACK NUMBER
「時間と空間をコントロールするスタイル」不世出のゲームメーカー・シャビがこだわる“サッカーの鍵”とは
posted2021/02/21 06:01
text by
ジェレミー・ドクトゥール&アントワーヌ・ブーロンJeremy Docteur et Antoine Bourlon
photograph by
Takuya Sugiyama
シャビインタビューの後編である。
彼が考えるミッドフィルダーとは。またポゼッションサッカーとは。そして今日のサッカーの進化をどう捉え、その中で彼自身は監督として何を実現しようとしているのか……。サッカー哲学の核心をシャビが語りつくす。(全2回の2回目/#1から続く・肩書などは掲載当時のままです)
(田村修一)
――2010年のシャビが2020年にタイムスリップしたら、どんな選手になっていたでしょうか?
シャビ たぶん何も変わらないと思う。2020年のシャビも、現役最後のころの僕と同じ気持ちだろう。ボールを支配するスタイルを志向し、ビジョンと選手の連携を重視する。やることも同じはずだ。たしかに(10年前と今とでは)サッカーのプレーは変わったが、かつての僕がもはや存在しえないほどには変化してはいない。だから同じ効果をもたらす選手がピッチに立っているだろう。
MFはチームのアイデンティティを体現する
――ミッドフィルダーを表現する言葉としては何が最も適切でしょうか。よく言われるのはプレーのアーキテクト(建築家)ですが。
シャビ チームにプレーを促すのがミッドフィルダーであり、プレーの鍵でもある。MFはプレーを読んでチームのバランスをとると同時に、チームメイト全員をよく理解して彼らをひとつにまとめながら最大限のポテンシャルを引き出す。MFはチームのアイデンティティを体現する。優れたMFがいればプレーのクオリティが向上し、相手に守備を強いることができる。彼らの存在が、しばしばチームに成功とタイトルをもたらす。それが僕のMFについてのビジョンだ。
――それではポゼッションプレーをどう定義しますか?
シャビ それは極めてシンプルで、チームがボールを保持した際にそれぞれが決められた通りのポジションを正確にとって相手のスペースをこじ開ける。これは僕が監督として実践していることでもあるし、現役時代に好きなやり方でもあった。ポゼッションプレーはコレクティブなスタイルの反映だ。たとえばウイングはワイドなポジションをとってチームメイトのためにスペースを作り出す。これはクライフの基本哲学のひとつでもあった。つまりアコーディオンのようにスペースを広げては閉じ、広げては閉じて相手を揺さぶる。時間と空間をコントロールするスタイルだ。ポゼッションがすべてにおいて滞りなく、しかもスペクタクルに展開できれば、プレーで相手を圧倒できる。僕にとってはそれがサッカーの鍵のひとつだ。