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「サイドバックはゲームの推進力」マルディーニが語る「サッキ革命」とSBの深い関係性 

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バレンティン・パウルッツィ

バレンティン・パウルッツィValentin Pauluzzi

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photograph byJean-Claude Pichon/L’Équipe

posted2021/02/14 17:01

「サイドバックはゲームの推進力」マルディーニが語る「サッキ革命」とSBの深い関係性<Number Web> photograph by Jean-Claude Pichon/L’Équipe

88−89シーズンのCL王者に輝いたミラン。マルディーニ(中央で左手ピースサイン)は「サッキ革命」の重要なピースだった

――あなたは今日の左サイドバックのように、中央にもポジションを取ってボールに100回触れたいと思いますか?

マルディーニ 絶え間ないポゼッションを実践する今日のスタイルにはときに憂鬱になる。サッキは僕に攻撃の意志を植えつけた。僕は左サイドバックが前にスペースを見つけたら後ろに戻るべきではないと思っている。もちろんミスは許されないが、後ろで無駄なパスを80回も回し続けるのはあまりに単調だ。繰り返すが僕はリスクを冒すほうを選ぶ。それは守備におけるインターセプトの場面でも同じだ。相手の動きを読んでプレーを遮断するほうがスペクタクルでもある。僕が所属したチームはどこもみなアグレッシブだった。相手の攻撃を待つスタイルは僕の性に合わない。

――かつて遊びのサッカーでは、最も下手くそな子供に左サイドバックを押しつけました。ミスしても被害が最も小さいから……。

マルディーニ 18年のアンドレア・ピルロの引退記念試合のとき、ファビオ・パラティチ(ユベントス・チームフットボールオフィサー)が僕にこう言った。「分かったことがひとつある。たとえ親善試合といえども、カフーとセルジーニョがプレーに加わってサイドで違いを作り出している。彼らがプレーの推進力になっている」と。

最新ミランのサイドバックに求める資質

――あなたは今、ミランのテクニカルディレクターを務めていますが、サイドバックを獲得するにあたり自身の経験を踏まえていますか?

マルディーニ このポストはずいぶん変わった。周囲を見渡してもアルフォンソ・デイビスはマルセロとは異なっているしマルセロはテオ・エルナンデスと異なっている。テオもまた兄のリュカ・エルナンデスとは異なっている。それは各々のプレースタイルと経験による違いだ。ある者は状況に適応しやすく、そうでない者はより限定的だ。また走るだけの選手もいる。

 サッキの時代はプレーのコンセプトが指針だった。個々の資質が限定されているにせよ、サイドバックには感情を遮断してでも従わねばならない指示があった。ところが今はオートマティックにプレーできないから、ポジションの意味を自分なりに解釈してある程度のフレキシビリティを示さねばならない。

――このドリームチームを見てどう思いますか?

マルディーニ このチームがプレーするにはボールがふたつ必要だ。ひとつではとても足りない(笑)。ただし僕ならロナウドを1トップに置いた3・2・4・1システムを採用する。それがチームバランスを安定させる唯一の方法だと思う。守備的MFのシャビとマテウスが、3人のDFをうまくカバーするだろう。

――バロンドールを受賞していないにもかかわらず選ばれたことはどうですか?

マルディーニ 1994年と2003年に僕は3位にランクインした。その意味はふたつある。ひとつは僕の現役生活がとても長かったこと。たしかに頂点は極められなかったが、とても安定していたといえる。もうひとつはサイドバックとセンターバックの異なるポジションで3位に選ばれたことだ。それもまた評価に値すると思う。

――あなたがこれまで獲得してきた様々な栄誉のなかでは何を意味しますか?

マルディーニ 常に言っているように、コレクティブなタイトルが最も大事だ。もちろん個人として表彰されるのも嬉しいし、その気持ちを隠すつもりもない。今回がまさにそうだ。でも個人タイトルの獲得をめざしたことは一度もない。

 ずっとチームのためにプレーしてきて、監督の言葉にもう少し無関心だったら(ポジションを変えなかったら)、世界最高の左サイドバックであり続けられたかもしれない。でもそうはしなかった。それが僕の生き方でもあるからだ。だからこそサッカーの世界で、より高い評価を得られたのだと思う。

【前回を読む】「心拍数190以上でプレーしていた」世界最高SBマルディーニが語る、攻撃参加の真髄【ドリームチーム選出】

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