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“IOCの収益源” アメリカが完全に「脈アリ」状態…東京五輪、開催可能性が高い3つの理由【英国からの視点】
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byGetty Images
posted2021/01/31 06:02
IOCバッハ会長と東京五輪組織委員会・森喜朗会長
「我々の仕事は五輪を開催することで、中止ではない。選手たちの夢を実現させるのが仕事だ。だから、安全な東京大会を運営するために昼夜を問わず取り組んでいる。それが、いかなる臆測の炎にも油を注がない理由だ」
質問の直接的な答えになっていないし、分かりきった内容だった。しかし、「中止が選択肢にあることを認め、開催国の共感を得られるように努めるべきでは」など、重ねて問いかけることはできない。
すでに私はIOC側から「ミュート」されていたからだ。
IOCのオンライン記者会見は、基本的に一方通行。もともと、短いやり取りの中でバッハ会長から具体的な何かを引き出せるとは期待していなかったものの、昨年3月に大会の延期が決まる直前まで「大会の成功に全力を尽くす。中止や延期は検討していない」と言い切っていたのと同じような光景の繰り返しに、何度目か分からないむなしさを感じた。
ある競技団体会長いわく「中止はいつでもできる」
「今は誰からも(開催に反対する)声が出ていない。しかし、いつ急展開するか分からない。中止はいつでもできるから」
1月下旬、ある主要国際競技団体の会長は、電話の向こうで筆者にそう言った。
昨年3月は、IOCが臨時理事会で方針転換を決議してから、わずか2日で五輪の延期が決まった。日本政府や大会組織委の合意があれば、今回も急転直下の中止はあり得るということを、スポーツ関係者は覚悟している。しかし、昨年のように参加国がボイコットを表明するなど本当に追い込まれた状況にならなければ、バッハ会長は最後のカードをいつまでも隠し続けるだろう。
多くの人が情熱を注ぎ、税金をふんだんに使って行われる世界最大のスポーツイベントの開催国からの声は、バッハ会長の耳に、いや、心に届かないのだろうか。