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148m息継ぎせず意識喪失も恐怖感ゼロ フリーダイビング歴2年で世界ランク4位・歳永ゆきね41歳の“異能”
posted2021/02/01 11:01
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Yukine Toshinaga
深く、より深く。真っ青な海の中を潜っていく。どこが自分の限界なのか。己の肉体だけを信じて。
フリーダイビング。酸素ボンベを使わず、息を止めたままどこまで深く潜れるかを競うスポーツだ。静寂の中を泳ぐ姿は、人魚のように美しく神秘的だが、命に関わる危険と常に隣り合わせである。
2020年10月、キプロス共和国で開催された世界大会で日本代表選手が優勝した。静岡市に住む歳永ゆきね選手(41、大会当時は40歳)である。
競技歴2年で、初めての国際大会で頂点に立った。歳永選手が優勝したのは、フィンと呼ばれる足ひれをつけずに、海中を垂直に潜った深さを競う種目。事前に何メートル潜るかを申告し、その深さにあるタグを取って戻ってくれば、記録が認められる。
競技は4日間で、チャレンジは1日1回だけ。初日、歳永選手はフィンをつけて潜る種目に出場した。上位20人の世界ランキングにも入っていない無名選手にもかかわらず、歳永選手は会場の視線を集めた。
手作り水着でなんと準優勝
理由は、その恰好だった。着用していたのはフリーダイビング用のウェットスーツではなく、手作りの水着。胸元には大きなクモのデザインで、さらにフィンもゴーグルも磯遊び用のものだった。“スパイダーウーマン”に変身した歳永選手の記録は40メートル。この種目で準優勝する好記録だった。
2日目からはフィンをつけない種目に出場した。スパイダーウーマンに続いては、キラキラの装飾がついた手作りの水着だった。
申告した38メートルは、自己記録より5メートルも深かった。距離を1メートル伸ばすのも大変な競技で「せっかくキプロスまできたから記録を出して帰りたいなと思って。海もきれいでキラキラしていて深く潜りたくなった」と話していたが、自己ベストを更新。トライアスロン用の水着で挑んだ3日目は42メートル、最終日は43メートルと連日の自己新記録で世界大会の頂点に立った。
それでも歳永選手は「運が良かっただけ」と笑う。