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植村直己、星野道夫と“同じ”43歳で遭難…「引退」した世界的登山家は“山のない日々”をどう過ごすのか
posted2021/01/30 17:06
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Masatoshi Kuriaki
――2016年に人生初の救助を体験し、2017年は、どうであれ、行くまい、と思っていたのですか。
栗秋 SOSを押したから「はい、終わり」ではないけど、終わりかもしれないとは思っていたので。そもそも、立ち直れていませんでしたしね。救助されて帰ってくるって、こんなにみじめなことなのか、と。周りの人は「元気でよかったやん」って言ってくれるんですけど、(救助で)山から引きはがされて終わりなんて登山じゃないですから。だから、一方で、また戻りたいという思いもありました。まだ山にしがみついていたい、という。でも、心の整理をする意味でも、1、2年はじっとしていようと思っていました。あと、山に残してきた荷物のことばかり考えていましたね。
――それらの荷物は、その後、別の登山者が下してくれたそうですね。
栗秋 ロニー・ディプリという登山家のチームが、その年の5月初旬、50kg程度の装備は下ろしてくれました。ただ、キャンプ3直下に張っていたロープはそのままにしておいたよ、と。60m×4本、240mのロープを張っていたんです。そうしたら、ロニーが2017年冬から3年続けて、ハンターに挑戦していました。そういうことか、と。
――そんな「変人」がまた……。でも、ついに栗秋正寿の意思を継いで、冬のハンターに挑戦する後継者が現れたのですね。
栗秋 2020年春は2人か3人で挑戦したようです。でも、もう今は、どうぞやってくれ、という心境ですよ。ただ、ロニーは今年60歳になりますからね。挑戦するだけでもすごいな、と思います。
植村直己、星野道夫と同じ43歳という“偶然”
――栗秋さんは今、48歳ですが、やはり体力の衰えを感じますか。