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武豊も強さに呆れた!? クロフネ、衝撃の武蔵野Sを振り返る…ダートでは“超ワールドクラス”だった【追悼】
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph bySankei Shimbun
posted2021/01/23 17:01
武蔵野ステークスに続きジャパンカップダートも圧勝したクロフネはその後種牡馬としても活躍した
後ろとの差が3馬身、4馬身…歓声はどよめきに
単勝2.3倍の1番人気に支持されたクロフネはまずまずのスタートを切り、中団の外につけた。3コーナーで早くも武が仕掛けて進出し、4コーナーで外から他馬をひとマクりにして直線へ。
軽く走っているのに勢いが違う。直線入口で楽に先頭に躍り出るとスタンドが沸いた。ラスト400m地点を通過して、後ろとの差が3馬身、4馬身……とひろがっていくと、歓声がどよめきに変わった。
武は、左ステッキを入れて追いながら何度もターフビジョンを見て、後ろとの差を確認している。
勝つためというより、どれだけ後ろを離せるかを試すために追っている、という感じだった。
後ろを7、8馬身離したところで武は追うのをやめた。ターフビジョンだけではわかりにくかったのか、股の間からも後ろとの差を確かめ、最後の十数完歩は流すようにしてゴールした。
1分33秒3というレコードは芝と変わらない時計
最後までビッシリ追ったわけではなかったのに、2着のイーグルカフェに9馬身もの差をつけていた。このイーグルカフェも前年のNHKマイルカップの覇者で、翌年ジャパンカップダートを制する超一流馬だった。ほかにもシンコウスプレンダ、ワシントンカラー、サウスヴィグラスなどの強豪が出ていたのだが、それらをキャリア9戦目の3歳馬が子供扱いしてしまったのだ。
しかも、従来の記録を1秒2も更新する1分33秒3というレコードのおまけ付きだった。これは芝と変わらない時計である。
一頭だけ、違う生き物が走っていたかのようだった。 検量室前に引き上げてきた武の笑顔には、「何、この強さは」という、驚きを通り越して呆れたようにも見える色さえ差していた。