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「失敗しても人生が終わるわけではない」全米選手権5連覇、ネイサン・チェンが見せた3つの強さとは
posted2021/01/23 06:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Matthew Stockman/Getty Images
1月17日にラスベガスで行われた全米選手権の男子シングルは、21歳のネイサン・チェンが優勝、ビンセント・ジョーが2位、ジェイソン・ブラウンが3位だった。
チェンは本大会5連覇で、1946年から1952年まで7連覇を果たしたディック・バトン以来の快挙となる。
「ディックはこのスポーツのアイコン的存在。自分は、当時の彼のレベルにはまだまだ近づいていないと思う。でも比べられる立場になっただけでも、光栄に感じます」とチェンは謙虚な感想を口にした。
若いライバルを振り切ってSP1位に
2018年2月に平昌オリンピックで5位に終わって以降、ネイサン・チェンは出場した全ての大会(ジャパンオープンを除く)で勝ち続けてきた。2018年秋から2020年の春までイェール大学にフルタイムで通っていた間も連勝は止まらず、負け知らずである。
この全米選手権では、そんなチェンの違った強さを3度、見せつけられた。
1度目は、SPの時である。
チェンの1つ前の滑走グループだったビンセント・ジョーが、4ルッツ+3トウループ、4サルコウと3アクセルを完璧に決めて、107.79を出して暫定トップに立った。
いくらチェンでも、1つでもジャンプのミスが出たらSP1位はこのままジョーのものになる。そんな緊迫した状況で、チェンは4ルッツ、3アクセル、そして後半で4フリップ+3トウループをきめ、113.92を叩き出した。世界王者の風格、というべきか。ジョーの演技は素晴らしかったが、こうしてチェンが完璧な演技を見せると、やはり格の違いというものがまざまざと感じられた。
オンラインでの会見で「演技前、ビンセントがどれほど良い演技をしたかわかっていたのか」と聞かれると、チェンはこう答えた。