フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「失敗しても人生が終わるわけではない」全米選手権5連覇、ネイサン・チェンが見せた3つの強さとは
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byMatthew Stockman/Getty Images
posted2021/01/23 06:00
全米選手権で5連覇を達成したネイサン・チェン
21歳とは思えない、達観した答え
「全米でも、世界選手権でも、オリンピックでも、優勝するのはずっとぼくの夢でした。2018年にはチャンスがあるかなと思ったけれど、ダメだった。どの試合でも緊張するけれど、オリンピックというのは全人生を賭けて挑むもの。前のオリンピックでは恐れていた最悪のことが、起きてしまいました。それでも人生は続いています」
「ぼくにとってスケートは人生を賭けてきたものだけれど、興味のない人にとっては何の意味もないことだと思うと、不思議な気持ちになります。メダルを取れたら嬉しいけど、たとえ失敗しても人生が終わるわけではない。これまで多くのことを成し遂げることが出来たし、今自分がいる場所に満足しています。スケートをやっている間は、できるだけ楽しみ、自分が到達できるベストになりたいと思っています。でもたとえオリンピックで金を逃しても、これまで成し遂げてきたことが無になるわけではない。人生はスケートだけではありませんので」
21歳とは思えない、達観した答えだった。自分を追い込んで追い込んで成長していくタイプのアスリートもいるが、チェンの強さはこうした自分を俯瞰的に見た人生観なのだろう。
チェンはスケート競技は2022年北京オリンピックを1つの区切りとすることを公言。その後は、現在休学中のイェール大学に復学する予定だという。スケーターとしての彼の最後の大舞台は、1年後に迫っている。