熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
100年以上続く日本人との縁… なぜフットボール王国ブラジルが大リーガー&NPB選手を輩出できるのか
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byNaoya Sanuki
posted2021/01/17 06:01
2013年WBC、日本と対戦したブラジル代表の松元ユウイチ。彼らのようなブラジル出身選手が日米の野球界に存在する
5人もメジャー経験者がいる
パウロ・オルランド外野手(35)は、2005年にシカゴ・ホワイトソックスとマイナー契約。2008年にカンザスシティ・ロイヤルズへ移籍し、2015年にメジャーでデビューして2018年までプレーした。MLB4年間の通算成績は、230安打、81打点、14本塁打。アメリカ独立リーグを経て、2020年からメキシコリーグでプレーする。
日系人のルイス・ゴウハラ投手(24)は、2012年にシアトル・マリナーズとマイナー契約を結び、2017年、アトランタ・ブレーブスへ移籍。この年の9月にメジャーへ昇格した。2018年までの通算成績が1勝4敗、防御率5.33で、2019年からはエンゼルスの3Aでプレーする。
そしてチアゴ・ビエイラ(28)は、2010年9月、17歳でマリナーズとマイナー契約。2017年8月にメジャーへ昇格した。
この年の末にホワイトソックスへ移籍し、2018年8月に初勝利をあげた。2019年までのMLB3年間の成績は、2勝1敗1セーブ1ホールド。2019年末に巨人に入団すると、2020年は27試合に登板して0勝1敗2ホールドの成績だった。
つまり、これまでブラジルからは5人のメジャーリーガー(投手3人、野手2人)が生まれており、現在、10人余りのマイナーリーガーがいる。
2013年のWBCでは日本と接戦を演じた
ブラジル野球の最高到達点は、2013年のWBCだろう。
2012年11月に行なわれた中南米予選でパナマなどを下して本大会出場権を獲得すると、2013年3月に福岡ドームで行なわれた第1ラウンド初戦で日本代表と対戦。初回、日本の攻撃を抑えたその裏、先発・田中将大(当時楽天イーグルス)を攻め、レオナルド・レジナット(当時タンパベイ・レイズのマイナー)のヒットで先制した。
日本も、3回に糸井嘉男(当時オリックス・バファローズ)、4回に坂本勇人(巨人)のタイムリーで1点ずつ奪って逆転する。しかし、ブラジルは4回にツギオ佐藤(当時シダックス)のタイムリーで追いつき、5回にレジナットの二塁打で再び逆転。7回を終えて、ブラジルが3-2とリードしていたほどだ。
しかし8回、日本は仲尾次オスカル(当時白鴎大学)を攻め、井端弘和(中日ドラゴンズ)のタイムリーと敵失などで3点を奪って逆転。8回は能見篤史(阪神タイガース)が、9回は牧田和久(西武ライオンズ)がブラジル打線を封じ、5ー3で辛勝した。ただブラジルからしてみれば、“野球大国”の日本相手に健闘したといえるだろう。
その後、ブラジルは強豪キューバに善戦しながら2-5で敗れ、最終戦も同じスコアで中国に屈し、第1ラウンドで敗退した。
運動能力はあるが競技人口が増えないジレンマ
ブラジルにはプロリーグが存在せず、最も優秀な選手はアメリカか日本でプロになることを目指す。
ブラジル人の運動能力が優れていることは、すでにフットボール、バレーボール、柔道などで世界トップレベルにあることで証明済みだ。しかし、野球の場合、国内で続けていても生活する手立てがないこと、競技人口と愛好者が増えないことがレベルアップを妨げている。
その一方で、厳しい環境にありながらビエイラ投手(巨人)のような選手が出現することが、この国のポテンシャルの高さを示している。
(第3回「巨人ビエイラの漫画みたいなブラジル秘話 片道6時間かけて練習参加、5カ月で球速17kmアップの超努力家」に続く。関連記事からもご覧になれます)