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クロップにナーゲルスマン、今やクローゼも 若き名将とドイツ指導者改革 “ある男の勇気”と協会のアイデア
posted2021/01/12 11:01
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
2020年の欧州サッカーシーンを振り返ってみて、興味深いことの1つにあげられるのがドイツ人指導者の躍進ではないだろうか。
FIFA年間最優秀監督にはリバプールのユルゲン・クロップ監督が2年連続で選ばれて、僅差での2位は昨年5冠を勝ち取ったバイエルンのハンス・ディーター・フリック監督。また、昨季CL準決勝に進出した4クラブのうち3クラブの指揮官がドイツ人だったことも記憶に新しい。
UEFAの最優秀監督には優勝したバイエルンのフリック監督が選出されたが、ユリアン・ナーゲルスマン監督(RBライプツィヒ)、トーマス・トゥヘル監督(パリSG)も、その手腕を高く評価されていた。
彼らは、どのようにして現在の地位まで辿り着いたのだろうか?
確かな結果を残している、ドイツの指導者事情を探ってみようと思う。
選択肢が狭いほど空気は淀みだす
ブンデスリーガで監督人事がメディアを騒がすとき、挙がるのは一昔前までは決まって似たような名前ばかりだった。もちろん、経験豊富な指導者を起用することが悪い一手とは思わないし、素晴らしい仕事をする老将は少なくない。
だが、選択肢が狭ければ狭いほど風通しは悪くなり、空気は淀み出す。新しいことへの挑戦がなければ、現状からの発展は期待できない。
ブンデスリーガにおいて、最初に大きな変化をもたらしたのはマインツだった。元選手の無名監督を信頼し、結果が出ない時期も辛抱強くサポートし、2年連続1部昇格直前のところで涙を呑んでも、自分たちが選んだ監督を信じ抜いた。
“3度目の正直”でクラブを1部昇格へ導いた監督は、その後は移籍先のドルトムントでリーグ2連覇を達成。さらにイングランドで、名門クラブに30年ぶりの優勝をもたらす偉業を成し遂げた。
そう、ユルゲン・クロップのことだ。