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クロップにナーゲルスマン、今やクローゼも 若き名将とドイツ指導者改革 “ある男の勇気”と協会のアイデア
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/01/12 11:01
クロップを筆頭にドイツ人指導者の充実には、数多くの努力があった
各州サッカー協会の管轄で行われ、とくに「指導者としてのパーソナリティの成長」にポイントが置かれている。このような講習会への参加に積極的なブンデスリーガの育成アカデミーも増えてきているそうだ。
若いうちから指導者を目指す人が増え、彼らが指導者講習会で知識を身につけ、最新のデータ分析法を学び、実践で経験を積み重ねていく。そんな流れが生まれている。
指導者の弱年齢化は、ブンデスリーガの1つのトレンドとなった。一時期はドメニコ・テデスコ(35歳/現スパルタク・モスクワ)、ハネス・ボルフ(39歳)、フロリアン・コーフェルト(38歳/現ブレーメン)など、多くのクラブが若手監督にチャンスを与える時期もあったほどだ。
「ラップトップ監督」への揶揄も存在する
とはいえ、そうした傾向も極端になると本質からずれてしまう。元バイエルンのメーメット・ショルに「最近の若手指導者は現場のことを知らないラップトップ監督だ」と揶揄されたように、監督とは知識をつめこみ、データ管理に長け、モダンな技術を使いこなすだけで、チームのパフォーマンスを向上できるわけではない。
ハイデルがクロップ監督やトゥヘル監督に白羽の矢を立てたように、若さの前にまず「指導者としての確かな資質」がなければならない。
特にプロの世界ともなればそのあたりの見極めは非常に重要だ。
様々なタイプの指導者を組み合わせる
現在DFBが取り組んでいることの一例として、様々なタイプの指導者の組み合わせというものがある。
例えば、ドイツ代表などで活躍した実績を持つ選手肌の指導者、プロコーチライセンス講習会で優秀な成績を収めた若手指導者、スポーツ生理学やフィジカル・メンタルなどを専門に学んだ学術肌の指導者と、そのような毛色の違う指導者を組み合わせたコーチングスタッフを作り出すことで、そこから生まれる化学反応をポジティブに働かせようという取り組みだ。実際、世代別代表などで試されている。
フッスバル・レーラーライセンス(日本におけるS級)インストラクターの主任であるダニエル・ニジェコフスキが「これまで戦術的、技術的な面にフォーカスしすぎていた。だが、我々は指導者の仕事をもっと総合力で考えなければならない」と口にしていた。
ギリギリの戦いを肌感覚で経験していないと、選手にどのような言葉を届けるべきか、どのような言葉が響くかわからないだろう。どのようなカテゴリーであれ、元プロ選手の指導者と過ごす時間は貴重なものになるはずだ。