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村田諒太と対戦? PFPランクで井上尚弥超え“世界最強・カネロ”は「東京でも試合をしたがっている」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2020/12/23 17:03
スーパーミドル級でも実績では最高級の王者を下し、カネロは勲章をまた1つ増やした
「PFPキングらしい絶品の出来だった」「カネロのPFP1位には賛成していなかったが、(スミス戦で)それを確固たるものとして認めよう」
試合後、選考委員たちからはそんな絶賛が相次いでいる。昨秋より同ランキングのパネリストを務める筆者も、ここでは同意する以外にない。個人的にはクイックネスと適応能力に欠けるスミスを買っておらず、カネロ圧勝は驚きではないが、それでもそのオールラウンドなボクシングと守備技術が出色だったことを認めないわけにはいかない。
2018年以降、カネロはゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)、ダニエル・ジェイコブス(アメリカ)、セルゲイ・コバレフ(ロシア)、今回のスミスとビッグネームを連破。井上、テレンス・クロフォード(アメリカ)も強いが、戦歴ではカネロが上回っている。スーパーミドル級で一発の迫力も増した印象があるメキシコの英雄こそが、現在、名実ともに世界の頂点に君臨しているのだろう。
ゴロフキンとのラバーマッチは実現するのか?
こうして最新の“カネロ祭り”が終わり、気になるのは今後、商品価値でも世界最高の4階級制覇王者がどんな方向に進むのかだろう。今のカネロと対戦すれば、相手にも巨額の報酬が保証される。約1年半の間にミドル級、スーパーミドル級、ライトヘビー級の3階級をまたにかけて戦った王者は、依然として引く手数多であり、遠からず再び争奪戦が勃発するはずである。
米国のファン、メディアの注目は、過去1勝1分の宿敵ゴロフキンとのラバーマッチが実現するかどうかに尽きる。
スミス対カネロの前日にあたる18日、IBF世界ミドル級王座を保持するゴロフキンはフロリダ州で指名挑戦者のカミル・シェルメタ(ポーランド)を7回TKOで一蹴。約14カ月ぶりのリングで健在ぶりをアピールし、カネロとの決着戦の機運は再び高まり始めている。
スミス戦後、試合を生配信したDAZNのインタビューを受けた際、カネロはゴロフキンとの第3戦を行っても構わないという意志を述べていた。心身の充実と時の流れによって丸くなったのか、薬物問題での因縁などから忌み嫌っていたゴロフキンへの拒否感はカネロの中で薄れている様子。カネロがスーパーミドル級に上げたことによるウェイトの問題、コロナ禍中でのゲート収入の確保(両者の第1戦はチケット売り上げだけで約2000万ドル、第2戦でも同約2700万ドルを叩き出した)など、クリアしなければいけない部分は多いものの、ゴロフキン側が条件面で歩み寄れば、来年5月のシンコデマヨ(メキシコの一部地域での祝祭日)に決着戦が組まれる可能性は十分ありそうだ。