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タイソンvsジョーンズ、称賛が集まったレジェンド対決の「問題点」 ボクシングの今後はどうなる?
posted2020/12/26 17:00
text by
前田衷Makoto Maeda
photograph by
AFLO
54歳のマイク・タイソンと51歳のロイ・ジョーンズ、合わせて105歳のレジェンド対決が話題をまいた。PPV(ペイパービュー)でこの番組に約50ドルを払って観戦した全米の視聴数は100万超が確実視され、興行としても成功だったようだ。今回は勝敗をつけないエキシビションマッチとして認められたが、視聴者のほとんどは'18年のメイウェザーvs那須川天心のような「真剣勝負」を期待したのではないか。
今回の2分8回戦は、ガチの試合とスパーリングの中間といったところか。2人の全盛時には想像もできなかった対戦は、確かに観る者を楽しませる内容ではあった。
ほぼ全盛時の体重に絞ってリングに上がったタイソンが、引退後15年ものブランクが信じられないほど敏捷に動いてジョーンズを攻めまくったのには誰もが驚いたのではないか。「奇跡的だった」(シャノン・ブリッグス)と同業のレジェンドからも絶賛の声が上がった。ジョーンズがクリンチ、ホールドを多用したのも仕方あるまい。本物のヘビー級ではない上、近年打たれもろくなっているから、タイソンの強打をまともに浴びないことに専念したのだ。
世のオヤジファイターを刺激するには十分
そもそもタイソンは格下の相手に惨敗してボロボロになって引退したはず。それが15年間でダメージが抜ける効果があったのか。誰もが天才タイソンのように戦えるはずもないが、世のオヤジファイターや引退王者たちを刺激するには十分だった。実際、今後もやる気のタイソンにかつての宿敵ホリフィールドらが対戦相手として名乗りを上げている。
ただこの一戦、ボクシングの規則を厳格に当てはめれば問題がないとはいえない。公式戦並みに計量や検診、果てはドーピング検査までやったというが、これで真剣勝負が黙認されれば、ボクシングの年齢制限はなんのためにあるのかということにもなる。
試合に立ち会ったWBCスライマン会長も「素直に素晴らしかった」と絶賛し、両者に「ブラック・ライブズ・マター」の文字を入れた特製ベルトまで贈呈した。まさかタイトル認定ビジネスをオヤジファイトのレベルまで拡大しようとの魂胆なのか。ボクシングの今後について考えさせられる「スペシャルマッチ」ではあった。