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【記録で12球団総括】ヤクルト低迷と“HR出すぎの神宮球場” 逆襲に必須な山田哲人の復調、投手陣の課題は?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2020/12/22 17:01
12球団本拠地の中でも随一の“打者優位”な明治神宮野球場。ヤクルトはその地の利を生かすチームを作れるか
先発投手の立て直しは一朝一夕ではできない。それに比べれば、救援投手の方がまだ期待が持てる。クローザーの石山、セットアッパーの清水に若手の寺島、今野、さらには梅野雄吾(PR1.03で6位)あたりが成長することで何とか戦える体制になるのではないか。防御率が悪くてもいいから5~6回まで投げることができる投手が4~5枚いて、それを優秀な救援投手陣につないでいく。こういう考え方だ。
NPB史上屈指のクローザーだった高津臣吾監督にとって、救援投手のテコ入れは最も得意な分野ではないか。
7年契約を結んだ山田だが、今季は不調だった
続いて打撃陣について見ていこう。
冒頭で紹介した通り今季のヤクルトはチーム打率は.242でリーグ最下位。本塁打数は114本で4位。リーグで断トツのヒッターズパークを本拠としながら冴えない成績だった。それは打線が“内弁慶”だったからだ。神宮では60試合で71本塁打だったが、他球場では60試合で43本しか打てなかった。昨年は、ホームで87本、ロードで80本を打っていたのだから、今年は大きく落ち込んだ。パークファクターに助けてもらった打線だといってもよいだろう。
ヤクルトの補強の最重要ポイントは救援陣ではあるが、打線が平均以下では戦えないのも事実だ。
打線が落ち込んだのは、昨年33本塁打のバレンティンの移籍、そして中軸の山田哲人の不振(35本98打点→12本52打点)が大きい。山田はこのところ、1年おきに好不調を繰り返している。順番から言えば2020年は谷の年ではあったが、落ち込みは例年になく大きい。今季、FA権を行使せずチームと7年にわたる大型契約を結んだが、来季の成績が気がかりではある。
村上ほど若い「不動の4番」はいない
しかしヤクルトの打線は、今季、太い柱が立った。いわずと知れた村上宗隆だ。
この世代には、清宮幸太郎、安田尚憲とスラッガー候補がいた。村上は清宮の外れ1位でヤクルトに入団したが、今や実績でも年俸でも清宮に大きな差をつけた。
3年目の今季は、打率.307(5位)28本塁打(2位タイ)86打点(2位)、.427で最高出塁率のタイトルも取った。総合的にもリーグ屈指の数字を挙げている。
生え抜きの主軸打者がいる球団は打線に安定感が増す。巨人は2018年に岡本和真が生え抜きとしては阿部慎之助以来の4番に座ってから強くなった。24歳の岡本はこれから長く巨人の大黒柱として活躍するだろうが、村上宗隆は、さらに若い20歳だ。12球団を見渡しても、これほど若い「不動の4番」はいない。
山田哲人、村上宗隆と、リーグを代表するスラッガーが生え抜きでいるのはヤクルトの強みだ。その周辺に適材を配すれば、打線の復調は可能だ。