水沼貴史のNice Middle!BACK NUMBER
オルンガは左足の振り! 三笘薫は2歩目! 水沼貴史が惚れる“速い”2人ともっと評価されていい鉄人とは
posted2020/12/22 11:01
text by
水沼貴史Takashi Mizunuma
photograph by
Kenichi Arai/AFLO
週末でJリーグの全日程が終了しました。
今季は新型コロナウイルスの影響で中断があったりと、不安や苦難が多かった1年でしたが、最後まで無事にスケジュールを消化できたことが何よりのことだと思います。難しい状況の中でもJリーグの動きは早かったと思いますし、結果として日本のスポーツ界を引っ張る存在になった。
村井満チェアマンのリーダーシップにも感謝しなくてはいけないですね。
交代枠「5」をフル活用した川崎
では、今季の総括を。まずは優勝した川崎フロンターレから。
今季のレギュレーションで特徴的だったのは選手交代枠が「5人」だったこと。そこを最大限に生かしたのが、史上最速でリーグ王者に輝いたフロンターレです。選手の層の厚さはもちろんですが、試合の流れをガラッと変える巧みな交代選手の起用で、うまく勝ち点を積み重ねていきました。
後半頭から家長昭博と三笘薫を投入して逆転した最終節の柏レイソル戦はまさに象徴的なゲーム(3−2)でしたね。フロンターレには家長、三笘の他にも齋藤学、長谷川竜也、旗手怜央などタイプが異なるウイングが多いので、厚い層だけでなく、選択肢が豊富。さらに前線にはゴールゲッターの小林悠とレアンドロ・ダミアンがいます。得点ランキングを見ても二桁ゴールをマークする選手が4人もいるように、どこからでも得点を奪えるのが強みでした(小林14ゴール、ダミアン・三笘13ゴール、家長11ゴール)。
GKソンリョンの安定感と進化
あと、攻撃にばかり目がいきがちですが、守備も素晴らしかったですね。中でもGKチョン・ソンリョンの存在は大きい。今季も抜群の安定感でしたし、流れを変えるセーブもたくさんありました。GKコーチからこれまでとは違うトレーニングを取り入れたことを聞いていましたが、その効果なのか、さらに守備範囲が広がった印象を受けます。
谷口彰悟、ジェジエウのCBコンビが機能し、右サイドの山根視来もフロンターレのサッカーにぴったりハマった。登里享平も攻守にいい働きを見せました。中盤も含めて、選手内の競争があり、どんどんいい流れになっていったと思います。
同じ神奈川県にあり、ともに攻撃サッカーを標榜する横浜F・マリノスに3連覇のチャンスを奪われて迎えた今季のフロンターレ。悔しさみたいなものがクラブや選手たちの心にあったのかもしれません。鬼木達監督が遂行したシステム変更や采配にも「さらに進化する」という強い意志も感じました。長年、クラブを支えた中村憲剛の引退に花を添える素晴らしい優勝だったと思います。