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箱根駅伝であの“山の神”が厚底シューズを履いていたら…前回大会7つの区間記録を超えるのか
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byL:Yuki Suenaga R:Nanae Suzuki
posted2020/12/19 11:02
ともに前回大会で区間記録を打ち立てた吉田祐也(左)と館澤亨次。今回大会ではどんな記録が誕生するだろう
ランニング効率が4%よくなるとはどういうことか
ちなみにランニング効率が4%良くなったところで、タイムが4%向上するわけではない。1kmを走るごとに必要とされる体力を4%ほど軽減できるわけで、これを数値化するのは非常に難しい。
前回大会でいうと2区相澤晃は従来の感覚よりも45秒ほどタイムが良かった。現場レベルでは、「5kmで10~15秒ほど違う」という声が多い。そこで「5kmで10秒短縮する」(1kmで2秒)と仮定して、非厚底ランナーのタイムを“減算”してみた。
あの“山の神”が厚底シューズを履いていたら…
1区佐藤悠基(東海大2)のタイムは1時間0分24秒。前回はナイキ厚底シューズを着用した米満怜(創価大4)が区間記録に7秒差と迫る区間歴代2位タイの1時間1分13秒をマークしたが、佐藤の厚底記録には50秒ほど及ばないことになる。
花の2区はメクボ・ジョブ・モグス(山梨学大4)が1時間5分18秒、塩尻和也(順大4)が1時間5分59秒となる。「厚底・モグス」なら区間記録はしばらく更新されていなかったかもしれない。前回の相澤は、区間記録は遠かったが、「厚底・塩尻和也」の記録を2秒上回り、日本人最高となる。なおモグスと塩尻は当時アシックスを履いていて、塩尻は現在アドバイザリー契約を結ぶデサントの薄底タイプを着用している。
3区森田歩希(青学大4)は1時間0分44秒。前回、イエゴン・ヴィンセント(東京国際大1)には1分20秒近くも区間記録を塗り替えられていたが、区間新・日本人最高の1時間1分23秒をマークした遠藤大地(帝京大2)よりは、40秒近くも良かった計算だ。
1999年の4区藤田敦史(駒大4)は1時間0分15秒。2020年の吉田祐也(青学大4)を15秒上回ることになる。当時、藤田は区間2位に2分34秒差をつけており、その走りは異次元だった。なお1999年大会は三代直樹(順大4)が2区で1時間6分46秒の区間記録(当時)をマークしている。ふたりが厚底を履いていたら、本当に恐ろしい記録が生まれていたかもしれない。
5区は前回の青木涼真(法大4)が1時間10分25秒となり、区間記録を樹立した宮下隼人(東洋大2)と同タイムになる。しかし、“実質最高”は他にいる。2005年に1時間9分12秒を叩き出した今井正人(順大2)だ。
当時は函嶺洞門を通過していたため、現行コースより20mほど短い。20mをプラスしてもタイムは1時間9分16秒ほどで、区間記録より1分以上も速い。そして、「厚底・今井正人」のタイムは1時間8分35秒になる。現在のレベルでも“神クラス”といえるだろう。