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箱根駅伝であの“山の神”が厚底シューズを履いていたら…前回大会7つの区間記録を超えるのか
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byL:Yuki Suenaga R:Nanae Suzuki
posted2020/12/19 11:02
ともに前回大会で区間記録を打ち立てた吉田祐也(左)と館澤亨次。今回大会ではどんな記録が誕生するだろう
下りの9区では2区のタイムを上回る可能性も
6区小野田勇次(青学大4)は57分16秒。前回、区間記録を打ち立てた館澤亨次(東海大4)の記録を1秒上回った。ただし、館澤がこの「厚底・小野田勇次」のタイムを意識していれば、あと1~2秒の短縮は可能だったかもしれない。
7区は林奎介(青学大3)が1時間1分34秒となり、前回の阿部弘輝(明大4)を6秒上回った。前回の阿部は故障上がりで万全ではなかったことを考えると、7区の区間記録は更新される可能性が高いといえる。
1997年は往路が向かい風、復路が追い風。“追い風参考記録”に厚底パワーが加わり、8区古田哲弘(山梨学大1)のタイムは1時間3分23秒になる。小松陽平(東海大3)が保持する区間記録よりも26秒も速くなる計算だ。
9区は前回、ナイキ厚底シューズを着用していた神林勇太(青学大3)が区間歴代3位の1時間8分13秒で走り、区間記録に12秒差と迫っている。しかし、9区篠藤淳(中央学大4)の厚底記録は1時間7分15秒。9区は2区の逆行コースで、どちらかというと下りの印象が強い。スーパーエース級がナイキ厚底シューズを履いて快走すれば、2区のタイムを上回る1時間4分台も夢ではないだろう。
10区は前回、ミズノのプロトタイプを履いた嶋津雄大(創価大4)が1時間8分40秒の区間記録をマークしている。厚底記録は1時間7分54秒だ。ただし、ミズノのシューズも進化しているので、2007年に1時間8分59秒で走破した松瀬元太(順大4)と同じシューズ条件で走るとどうなるかはわからない。
好記録続出はシューズの進化だけが理由ではない
シューズの進化が記録に直結しているのは間違いないが、5年以上前の選手に突然、ナイキ厚底シューズを渡したからといって、先ほど示した「タイム」で走るは難しいだろう。なぜなら走るのは「心」を持った人間だからだ。駅伝は腕時計でタイムやペースをチェックしながら走る選手が多い。普段よりも明らかに速いペースでレースが進んでいれば、どこかでブレーキをかけてしまう。好記録が誕生している背景には、シューズの進化だけではなく、トレーニングの進化、メンタル面の進化(目標記録のレベルアップ)など様々な要素が絡んでいる。
今年11月の全日本大学駅伝は4区間(1、4、5、6区)で14人が区間新記録をマークした。区間賞を獲得した8人全員がナイキ厚底シューズを着用。6人が最新モデルの『エア ズーム アルファフライ ネクスト%』、2人が前モデルの『ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%』を履いていた。
4区で区間記録を樹立した石原翔太郎(東海大1)は10kmを28分09秒前後で通過。箱根駅伝2区で日本人最高記録(当時)を打ち立てた塩尻和也(現・富士通)が4年時にマークした区間記録を32秒も塗り替えた。数年前には考えられないことが次々と起きている。
2021年の箱根駅伝も“凄い記録”が誕生するだろう。