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「早稲田ファンからため息も…」慶応、明治、早稲田の“最新勢力図” ラグビー大学選手権の本命は?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph bySankei Shimbun
posted2020/12/18 17:02
11月23日の早慶戦。前半、突進する慶応・鬼木崇。試合は22対11で早稲田が勝利した
相良南海夫監督の著書『早稲田ラグビー 最強のプロセス』によれば、昨年も早明戦に敗れた後から、本格的な勝つための「仕込み」に入ったことが分かる。早稲田らしいBKのアタックが急成長を遂げたのは12月に入ってからだった。
準々決勝の日大戦ではFB河瀬諒介、WTB古賀由教とつないで、90mのトライを決めた。キックでエリアを重視していた早稲田が、突如、牙を剝き始めたのだ。そして準決勝の天理大戦を経て、決勝の明治戦でアタックが爆発、前半だけで31対0とリードを奪い、優勝を引き寄せた。
昨季の早稲田は、学習能力で頂点に返り咲いた。さて、コロナ禍で練習時間が限られていた状況で、同じような能力を発揮できるのか、コーチ陣の分析能力も問われる。
“絶対に負けられない戦い”早稲田vs.慶応のポイントは?
早明戦の敗戦を受け、いよいよその力が問われるのが、12月19日に秩父宮ラグビー場で行われる慶応との準々決勝だ(大学選手権での慶応の対戦について、個人的に「早慶戦」とは書かない。早慶戦、早明戦は、あくまで対抗戦での試合に用いられる言葉だと思うので)。
学習能力を発揮中の慶応は、早慶戦の時とは違うチームになった。ラインアウトだけでなく、3回戦の京産大戦ではスクラムでも強さを発揮している。
慶応においては、1試合におそらくは4回から6回ある敵陣22m内でのラインアウトを、どれだけ得点に結びつけられるかが鍵だ。
ラインアウトモール、崩れてからのしつこいサイド攻撃が王道だが、それを「表」として、何かしらの「裏」のプレーを用意している可能性もある。しかし、愚直にサイドを攻めてくるのが慶応らしいかもしれない。
一方の早稲田は、精度を上げてきた慶応のラインアウトからの攻撃に対して、ディフェンスをバージョンアップ出来るかがひとつの課題だ。
そしてアタックでは、個人技に頼ることなく、タイミングと角度などの早稲田の伝統工芸に加え、クリエイティビティを付加したい。
早明戦では精彩を欠いたSO吉村紘、初先発となるCTB伊藤大祐がどんな創造性を加えられるかに注目したい。
2年前の同じ準々決勝も同じカードだった。79分、最後のワンプレーまで慶応がリードしていたが、早稲田FWがスクラムで反則を奪い、千載一遇のチャンスをトライに結びつけて逆転勝利を収めた。
壮絶な試合だった。
2020年、明治が泰然自若として構えるなか、早稲田と慶応が生き残りをかける。
両軍の学習能力は、果たしてどちらが高いのだろうか?