スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
「早稲田ファンからため息も…」慶応、明治、早稲田の“最新勢力図” ラグビー大学選手権の本命は?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph bySankei Shimbun
posted2020/12/18 17:02
11月23日の早慶戦。前半、突進する慶応・鬼木崇。試合は22対11で早稲田が勝利した
間違いなく、大学選手権の本命である
11月22日の帝京戦では、前半は後手を踏んだものの、慌てることなく自分たちのアタックを遂行し、39対23と圧勝する。ただし、粗雑なパスが時としてピンチを招いていたこともあり、早明戦では軽いプレーが命取りになると見ていた。
しかし、いざ早明戦になってみると、軽いパスは1本しかなかった。パスの精度にこだわり、しっかり練習をしてきたことがうかがわれた。そしてなにより、明治は早明戦に全霊を傾け、早稲田をリスペクトし、研究し、対策を怠らなかった。
明治は、早稲田の長所であるラインアウトを崩壊させた。身長190センチのLO片倉康瑛、188センチで主将を務めるNo.8の箸本龍雅の存在自体が早稲田にプレッシャーをかけ、ミスを誘発した。この日の早稲田のラインアウトは13本中7本の成功。現代ラグビーで、この成功率では勝つことは難しい。早稲田ファンからは再三再四、ため息が漏れた。
さらに早明戦での明治は情け容赦なく、ラストまでフィットネス、メンタル両面で切れることなく、最後も左隅にトライを決めてとどめを刺した。
34対14。圧勝である。
今季の明治は学習能力が高く、勤勉だ。間違いなく、大学選手権の本命である。
昨季の早稲田が「早明戦に負けてから、優勝するまで」
さて、早稲田はいまだ学習能力を試される機会がなかった。学習能力以前に選手の能力そのものが高く、帝京、慶応を退けていた。
早明戦での早稲田は、特別な対策を施したようには見えず、あくまで大学選手権を見据えたうえで、現在地を知るために戦っているように見えた。1990年代のピュアな感情がほとばしる早稲田を記憶している者としては、やや寂しい気はするが、これも時代の流れだろう。
早明戦は、早稲田の脆弱性をあぶり出した。不安定なラインアウト、前半のスクラムにおける駆け引きでは後手を踏み、BKのアタックは明確な意図を欠いた。
この2週間は、早稲田にとって学習能力が試される時間だった。