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巨人「DH制」提案をセ他球団が拒否したワケ 「北風と太陽のように絶対に脱がない」と“意地でも反対”も
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2020/12/18 17:15
日本シリーズについて「全てにおいて、われわれは劣っていた」と語った原辰徳監督。巨人はDH制の導入に前向きだが……
逆に意地でも反対すると言い出す球団もあった
理事会は継続審議を求める巨人と、すでに決定事項と突っぱねる5球団という構図で終始した。ただそこには日本シリーズの結果を受けて、ファンが何を感じ、どうすべきだと思っているのかという声は全く反映されていない。
論争の中では話し合いを求める巨人に対して、「時間をかけて世論に訴えて、指名打者の認知論が広がるようなら、我々は北風と太陽のように絶対に脱がないようになってしまいます」とファンの声が導入へと大きくなったら、むしろ逆に意地でも反対すると言い出す球団もあったという。
その辺のファン不在感もまた気になるところである。
「子供たちの出場機会が増えれば、野球人口だって増えるはず」
「もちろんパ・リーグとの格差を是正していくためにも指名打者制度の導入は必要だと思う。ただセ・リーグが指名打者制度を導入する一番の意味は教育的だということです」
こう語っていたのは巨人・原監督だった。
「我々が指名打者制度を取り入れれば、高校野球や少年野球の世界でも変わるきっかけになる。レギュラーが1人増えて9人から10人になる。これほど大きな教育的効果はないし、子供たちの出場機会が増えれば、野球人口だって増えるはず。そのために決断すべきなんです」
頑なに変化を拒むセ・リーグの理事会を取材して思ったことがある。
「人気のセ、実力のパ」と言われて、スタンドに閑古鳥が鳴いていた時代から、前後期制や指名打者制度など自分たちが生き残るために新しいことに挑戦し続けてきたのがパ・リーグだった。その変化を厭わず挑戦し続ける精神がいまのパ・リーグのタフさを生んだのではないだろうか。そして旧態依然とした既得権益にしがみついて、変化を求めないのがセ・リーグなのだ。
その動けない体質こそが、パ・リーグとのリーグ間格差を生んでいるの最大の理由ではないだろうか。
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