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常人離れしたカンテ、黒子役FWジルーの復活… 好循環チェルシーの“ベスト布陣”を考えてみた
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2020/12/16 06:00
ゾウマのゴールを喜ぶジルーとチルウェルらチェルシーイレブン。ランパード監督のもとで明らかに好循環に入っている
昨シーズンまでは2ライン間で足もとにボールを要求し、仕掛けるプレーを得意にしていた。しかし、今シーズンはセンターバックの脇まで降り、ビルドアップの出発点になるケースも少なくない。フィードに自信のないカンテやズマも、近距離にいるマウントなら安心してマイボールを委ねられる。持ち場に戻った際は足を止めず、ボックス内への侵入を繰り返すようにもなった。
数多くの即戦力獲得で存在感が希薄になるといわれたマウントが、プレーの幅を広げて定位置をつかみ取った。左インサイドハーフの1番手は、チェルシーの下部組織が輩出した21歳のヤングガンだ。
そして右インサイドハーフは、汎用性にすぐれたカイ・ハバーツ、よりテクニカルで攻守の切り替えも鋭いマテオ・コバチッチが、コンディションや対戦相手の特性によって使い分けられている。ランパードは19歳のビリー・ギルモアに「インサイドハーフの適性がある」と語っていた。ジョルジーニョの出番がいよいよなくなった。
ジルーが華やかすぎる復活を果たしたワケ
11月下旬まで、ランパードはタミー・エイブラハムとティモ・ベルナー、ハバーツをセンターフォワードに起用してきた。しかし、ジルーの華やかすぎる復活(前述)により、前線の序列も変わりつつある。
対戦相手のパスコースに立ちふさがったり、プレスの強度を高めたり、ジルーはみずからの判断で何をすべきか瞬時に察知できる。フランス代表のディディエ・デシャン監督も、「戦略、戦術的に極めて重要な男」と常々語っているように、オフ・ザ・ボールの動きではジルーに一日の長がある。
チャンピオンズリーグのセビージャ戦で4ゴールを奪った12月2日以降、ボックス内の動きも凄みを増した。しばらくの間はジルーが前線の軸となる公算が大きい。ともに基準点という特徴を持つタミー・エイブラハムはベンチ、普段の練習でジルーから何かを盗み、少ないチャンスで最大限のアピールをするしかない。
万能型ベルナーもランパードの信頼を得た
ジルーとともに定位置をつかみ取ったのが、ティモ・ベルナーだ。プレミアリーグで12戦全試合先発という事実が、ランパードの信頼を物語っている。中央でも両サイドでも機能する万能型で、そのスピードとスタミナを存分に発揮している。
ただ、きょうは1トップ、3日後はウイング、1週間後にインサイドハーフでは、心が疲れてしまう。しかもいま、チームが好調なのだから無闇に動かす必要もない。