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絶不調アーセナルと週給4900万円の“生きた化石”エジル 古典的ナンバー10にもう出番はないのか
 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2020/12/15 17:01

絶不調アーセナルと週給4900万円の“生きた化石”エジル 古典的ナンバー10にもう出番はないのか<Number Web> photograph by Getty Images

エジルのあの美しいパスの軌道を、エミレーツスタジアムで見る日はもうやってこないのか

 敵の術中にはまったトッテナム戦は、せめてベンチにでも優れた創造性の持ち主がいればと思わせる敗戦だった。攻撃志向のアーセナル指揮官は、試合後に「ボール支配率の高さ」と「クロスの多さ」に触れて内容的な優位をアピールしていた。しかし、69.8%のポゼッションは、カウンター狙いの相手が持たせてくれたもの。44本を数えたクロスは、中央の侵入経路を塞がれたままだった証拠でもある。

あのアーセナルのチャンス創出数が下から3番目

 ジョゼ・モウリーニョ体制下で組織的な守備に改善が見られるトッテナムにとっては、いずれも計算通りだ。現在4勝7敗1引分けの15位アーセナルは、11節時点で守備的なバーンリーとニューカッスルの次にチャンス創出回数が少ない。怖さに欠けるボール支配に終わる度に、国内メディアのアーセナル戦レポートには、エジルの復帰要求とまではいかないものの、選手登録外への言及があった。

 しかしながら、登録外を決めたアルテタも、軽々と判断を下したわけではない。プレミアには、ルート・フリット監督時代のニューカッスルや、ロベルト・マンチーニ体制当時のマンチェスター・シティで、それぞれアラン・シアラーとカルロス・テベスという大物が、監督との単純な確執で一時的に干されたこともある。

 その点、アルテタは、昨季折り返し地点目前の就任後、コロナによる約3カ月間のリーグ中断期、そして監督として初のフルシーズンを前にも頭を悩ませた上での結論だ。「サッカー面」とだけ公言している登録外の理由が、無難な言い訳とは思えない。 

就任当初はエジルを先発起用していたが

 就任当初は、初采配から中断までのリーグ戦10試合の全てでエジルを先発起用してもいた。前監督のウナイ・エメリが残したチームが、リーグ順位は中位でもムードは最低だったことから、2016年まではチームメイトでもあったビッグネームの扱いには、慎重に慎重を期す部分があったのだろう。エジルを攻撃の中枢に据えた機能を実戦で確かめようとしたことに変わりはない。新体制下で初勝利した2020年元日のマンチェスター・ユナイテッド戦後、センターサークル付近で喜び合うアーセナル選手の中には、90分間を戦い終えた背番号10がいたし、新監督と笑顔で抱き合う姿まで見られた。

 当日にフルタイムでプレーした、ルーカス・トレイラも、最終的には不要と判断された。ボール奪取にインターセプトにと走り回っていたボランチは、今季をレンタル移籍先のアトレティコ・マドリーで過ごしている。逆に、チャンスを与えられて「必要」と判断され選手もいる。監督交代の2カ月前に、自軍サポーターに対して悪態をつき、放出しか道はないとも思われたグラニト・ジャカが好例だ。闘士の空回りがあっても「気に入っている」とアルテタが言うMFは、トッテナム戦が今季プレミアで9試合目の出場だった。

【次ページ】 エジルが出た大一番は2019年のEL決勝までさかのぼる

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