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ビエルサが語った「失点の7通りのパターン」とは? リーズの強烈な“ハイプレス”の仕組みも愛弟子が解説 

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赤石晋一郎

赤石晋一郎Shinichiro Akaishi

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posted2020/12/12 17:01

ビエルサが語った「失点の7通りのパターン」とは? リーズの強烈な“ハイプレス”の仕組みも愛弟子が解説<Number Web> photograph by Getty Images

アーセナル戦でピッチに向けて指示を出すビエルサ

「正直者」との賞賛と「勝ち点を失った」との批判の声

 前半27分にチェルシーはジルーのゴールで同点に追いつく。このシーンでも攻撃の起点となったのがチアゴ・シウバだった。ボールを持ったDFズマにバムフォードがファーストプレスをかけるものの、ボールを回されチアゴ・シウバがボールを保持。慌ててクリヒがプレスに行くがあっさり交わされ、チアゴ・シウバは中盤のMFマウントにパス。マウント→WGジエシュ→SBジェイムズとボールが繋がり、ジェームズのクロスにジルーが飛び込み、ゴールが決まったのだ。

「リーズのCBへのプレスはFWとOMFの連動によって行われるのですが、バムフォードがプレスで孤立している場面がこの日は目につきました。チェルシー戦はOMFをクリヒが務めていましたが、元来ミックスMFの特性がある選手であるためかペナルティアークから遠いポジションを取ることが多く、距離があってDFにプレスをかけ切れていない印象でした。チアゴ・シウバが起点となった攻撃をリーズは止めることが出来ていなかった。これはマルセロが言うところの『失点の7通りのパターン』のうちの、(7)が出来ていなかったと言えるでしょう」

 チェルシーの2点目もチアゴ・シウバのパスから攻撃を作られてしまい、決定機でFWベルナーが放ったシュートをGKメスリエが必死のセーブで回避。しかしコーナーキックからズマにヘディングシュートを決められてしまう。その後も失点して1-3でリーズは敗れた。

 イングランドメディアでは、後半ペナルティエリア内でチルウェルに引っ掛けられたポベダは足がもつれながらも立て直しシュートを打ったシーンが話題になった。ポベタが倒れていたらレフリーがPKを与えていた可能性が高かったプレーを巡り、「正直者」と賞賛の声があがる一方で、「愚か者」「勝ち点を失った(PKがあれば同点になり試合展開は違うものになった可能性があった)」などの声も上がったのだ。

ポペダのプレーに言及しなかった

 試合後の、記者とビエルサの一問一答は以下の通りだ。

――前半はチェルシーと互角でしたが、後半に何ができなかったのか?

「結果は公平だと思いました。欠けていたのは、チェルシーの後ろからのビルドアップに対して初期段階でボールを取り戻すことができなかったということです」

――2点目はチェルシーのセットプレーでした。セットプレーの守備に不満を感じていましたか?

「はい、その通りです。我々はこの場面で失点を回避できず、最終的には重要な要因となりました」

――後半、ポベダはエリア内でファウルされたように見えたが、とにかくプレーを続けてシュートを打った。彼はダウンし、PKを受けるべきだったと思いますか?

「私は明確にタックルを見ていなかったので、私はそれについてあなたに意見を述べることはできません」

 分析癖が過ぎて“スパイゲート騒動”を巻き起こしてしまったビエルサだが、彼のチームは常にクリーンなプレーを心掛け、フェアプレーを尊ぶ。負けを受け入れ、ポベダのプレーに言及しなかったのはエル・ロコの人格をよく表していた。

 アーセナル、エバートン、チェルシーと続いた強豪との3連戦をリーズは1勝1敗1分けで終えた。

後編に続く

荒川友康(あらかわ・ゆうこう)

サッカー指導者。アルゼンチンで複数のチームや滝川第二高校での指導を経て、ジェフ千葉・育成コーチ、京都サンガ・トップチームコーチ、FC町田ゼルビアトップチームコーチなどを歴任。ビエルサのみならず、Jリーグでもアルディレスなどの名将の元で働く。アルゼンチンサッカー協会認定のS級ライセンスを所持。FCトレーロス所属。

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