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ビエルサが語った「失点の7通りのパターン」とは? リーズの強烈な“ハイプレス”の仕組みも愛弟子が解説
text by
赤石晋一郎Shinichiro Akaishi
photograph byGetty Images
posted2020/12/12 17:01
アーセナル戦でピッチに向けて指示を出すビエルサ
リーズは「4-1-1-1-3」をベースにした可変システム
アーセナルのミケル・アルテタ監督はビルドアップを重視したモダンなプレースタイルを導入して注目されている新人監督だった。3-4-3という前衛的なシステムを導入し、GKからDFに丁寧に繋ぐビルドアップ戦術が評価され、メディアの間ではチェルシーのランパード監督以上だという高評価も出るほどであった。
この一戦を日本で唯一のビエルサ門下生である荒川友康氏の解説と共に掘り下げてみたい。
この日、アーセナルはこれまでメインシステムにしていた「3-4-3」ではなく、「4-2-1-3」(4-3-3)を採用してきた。
リーズのシステムは、これまでも解説してきたように「4-1-1-1-3」をベースにした可変システムである。
4-2-1-3に対しては、リーズは4-1-1-1-3から4-3-3(4-1-4-1)にシステムを可変させマッチアップを明確にする。ビエルサの特徴は相手のフォーメーションに合わせて、マッチアップ、つまりマンマークする相手を明確にする形でシステムを可変させるところにある(図参照)。
前線は「マイナス1」、「DFはプラス1」、中盤は全マークがビエルサのシステムでは基本ルールとなる。
守備時はマッチアップを重視した「4-3-3」という形を取り、攻撃時は「4-1-1-1-3」をベースに流動的に攻めるというのが対アーセナル戦での基本構造となっていた。
注目は「両チームのビルドアップの差」
荒川が試合のポイントを解説する。
「私がアーセナル戦で注目したのは、両チームのビルドアップの差ですね。アーセナルはリーズのハイプレスに遭い、比較的早い段階でビルドアップを放棄するシーンが目に付きました。GKが前線に大きく蹴り出したり、DFも苦し紛れにロングボールを蹴るシーンが散見されました」
こうしたシーンは、昨年のFAカップでも見られた。つまりアーセナルは有効なビルドアップをリーズのハイプレスのためにほとんど出来なかったのだ。