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【記録で回想】ラミレスは凄いが「クセも凄い」 四球嫌いと“ドラフト下位&脇役を抜擢”できたワケ 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byJIJI PRESS/Shigeki Yamamoto/Hideki Sugiyama

posted2020/12/15 11:03

【記録で回想】ラミレスは凄いが「クセも凄い」  四球嫌いと“ドラフト下位&脇役を抜擢”できたワケ<Number Web> photograph by JIJI PRESS/Shigeki Yamamoto/Hideki Sugiyama

ヤクルト、巨人、DeNAと渡り歩いたアレックス・ラミレス。選手と監督、それぞれでクセが凄かった

 ラミレス監督になってから主力に抜擢された選手のドラフト順位について投打別に見てみる。

<投手>
石田健大(投手)2015年 2位
今永昇太(投手)2016年 1位
濱口遥大(投手)2017年 1位
東克樹(投手)2018年 1位
上茶谷大河(投手)2019年 1位
大貫晋一 (投手)2019年 3位
坂本裕哉(投手)2020年 2位

<野手>
桑原将志(外野手)2012年 4位
宮崎敏郎(内野手)2013年 6位
戸柱恭孝(捕手)2016年 6位
倉本寿彦(内野手)2015年 3位
柴田竜拓(内野手)2016年 3位
神里和毅(外野手)2018年 2位
佐野恵太(外野手)2017年 9位

投手はドラフト上位、野手は下位を抜擢

 投手はドラフト上位で獲得した選手を順当に起用している。専門外でもあるからか、ラミレス監督はスカウトや投手コーチの助言に従って起用している感じだ。好素材にチャンスをしっかり与えることが必要と考えていたのではないか。

 しかし野手は、下位指名選手がどんどん抜擢されている。おそらく野手に関してはラミレス監督が直々に打撃を見て、抜擢しているのだろう。特に宮崎敏郎、佐野恵太と下位指名選手が規定打席到達1年目で首位打者を獲得した選手が出たのは見事の一言だ。

 さらにラミレス監督は、他球団の脇役的な選手を獲得して活用するのが得意だ。2018年の大和(阪神)、伊藤光(オリックス)、2019年の中井大介(巨人)などがそれだ。こと打撃に関して、ラミレス監督は他の指揮官が見えていない部分も見えていたのではないか。

 作戦面でユニークだったのは「8番投手」だ。これはかつて名将・三原脩監督も使った奇策である。

<ラミレス監督就任後のスタメン8番、9番の打撃成績>
2016年
8番 440打94安2本32点 率.214
9番 276打36安3本14点 率.130
2017年
8番 312打49安4本23点 率.157
9番 467打121安2本51点 率.259
2018年
8番 263打31安2本7点 率.118
9番 454打92安4本38点 率.203
2019年
8番 375打81安2本38点 率.216
9番 304打62安2本27点 率.204
2020年
8番 280打58安3本18点 率.207
9番 265打52安2本13点 率.196

「8番投手」とは要するに「9番打者を戦力化する」ということだ。

DH制がないから「9番倉本」だったのかも

 ラミレス監督が本格的に8番に投手を入れ始めたのは2017年だった。この年5月4日の巨人戦に9番遊撃で初めてスタメン出場した倉本寿彦が、スタメン9番で414打数114安打、打率.275と好成績を上げ、1番桑原将志と「Wリードオフマン」として機能した。ラミレス監督はCS、日本シリーズでDH制の無い試合もこの形で戦った。

 ただ、この年以外は「8番投手、9番野手」が十分に機能したとは言えない。適任者がいなかったのだろう。

 ラミレス監督のこの奇策は「DH制がないために投手の打席で打線に穴が空く」ことへの対策という一面があるだろう。総じて成功したとは言い切れないが、前例がなくても良いと思えばどんどん実行するのが「ラミちゃん流」だったのだ。

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