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巨人の本拠地が「東京ドームのまま」への“ちょっとした絶望”…この狭さではパとの格差が埋まらない?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2020/12/04 17:03
1988年3月に開場した東京ドーム。横浜スタジアム、神宮球場に次いで3番目に狭いスタジアムだ
パ・リーグの選手「ホームランが出やすい球場ですから」
ソフトバンクの柳田悠岐は、あの広い“ヤフオクドーム”で育ってきた。そこできちっと打たなければホームランにならない感覚を身体に染み込ませて、あのマン振りのバッティングの土台を築き上げた。
ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平投手も日本ハム時代に札幌ドームという環境があったから、実戦の中で遠くへ飛ばせるそのポテンシャルを、存分に伸ばすことができたのではないだろうか。
「ホームランが出やすい球場ですから」
昨年までの交流戦で東京ドームだけではなく、横浜スタジアムや神宮球場などのセ・リーグ本拠地球場で試合を行うとき、パ・リーグの選手がこう語るのをよく聞いた。
投手は長打を警戒して制球を重視すること、打者はだから力まずに芯で捉えることだけを考えればいい。判で押したように選手たちは球場への対応をこう語っていた。
おいそれとは解決できない問題が山積
スタジアムの環境を意識したとき、これらの球場ではそういう野球が求められる。断っておくがそれが全てだと言っているわけではない。
ただ、セ・リーグのチームは長年、箱庭のような球場でそれに合わせた野球をやってきた。そのこともここ数年のパ・リーグとの野球の質の違いを生む、1つの要因だったように思えるのだ。
三井不動産の菰田正信社長は今回の東京ドームの子会社化を受けた日本経済新聞の取材に「ドームや商業施設などの建て替えも視野に入れる」との展望を語っている。そうなれば完全ボールパーク化した世界基準のスタジアム建設も夢ではないのかもしれない。
ただ、建て替える間の代替え球場など、おいそれとは解決できない問題が山積する。新球場の建設ならまだしも、東京ドームシティアトラクションズ(旧後楽園ゆうえんち)を含めた現在の敷地内に建て替えるという案にどれほど実現性があるのかは、なかなか難問でもあるはずだ。
そう考えれば考えるほどに政治のプロパガンダに利用されて宙ぶらりんになったままの築地市場の跡地問題が恨めしく思える。
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