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「使い勝手のいい選手」を卒業…フロンターレ登里享平が継承する“憲剛イズム”とは
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byHiroki Watanabe/Getty Images
posted2020/12/05 17:01
「憲剛さんがいなくなった後を想像してみたら……」と率直な心境を明かした登里(右)
指揮官も“ノボリの目線”まで下りてきてくれた
「言いたいことを言ったし、聞きたいことを聞きました。先発でやれるように欲を出していくっていうことも。オニさんは自分の経験を踏まえて、同じ目線で話をしてくれて、監督に話をしているというよりも何か先輩に話を聞いてもらっている感じで。でもスッキリしたし、このチームのためにしっかりやろうってあらためて思えた。ここから吹っ切れた感じはありましたね」
中村と同じように、指揮官も“ノボリの目線”まで下りてきてくれたことがありがたかった。
自分も変わっていかなければならなかった。
細く長くは、もうやめた
練習から声を出し、周囲に気を配りつつ、機能させていくことをより心掛けていくようになる。自分がチームに入ることで、目となり、口となることを見せていく。“使い勝手のいい”だとあくまで受け身。意識したのは自分からアクションを起こしていくことだ。
細く長くは、もうやめた。目指すのは中村のように太く、長く。
先発に復帰すると自信を持って大胆にかつ繊細にプレーしていくようになる。気がつけばレギュラーの座を確保するのみならず、試合のたびに存在感を上げていった。
「やはりそこは(車屋)紳太郎の存在がありました。日本代表だし、Jリーグのベストイレブンだし、俺にとっては高い壁。1試合でもヘタな試合をしてしまったら、交代させられます。そういう危機感みたいなものはもちろん今もあります」
車屋とは認め合っている仲。ライバルのプレーを見ることで参考になったものはヤマほどある。このヒリヒリの緊張感がここにきての成長を後押しした。
ルヴァンカップを初制覇できたとはいえ、J1では3連覇を逃した。このタイトルを獲らなければ、高い壁を乗り越えたとは言えないのだと己に言い聞かせた。
中村がケガで長期離脱するチーム事情のなか、目となり、口となることも求められた。だからこそ今シーズンは確固たる意志をもって、意識してチームの前に出ていこうとした。