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「使い勝手のいい選手」を卒業…フロンターレ登里享平が継承する“憲剛イズム”とは
posted2020/12/05 17:01
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Hiroki Watanabe/Getty Images
登里享平が“憧れの人”中村憲剛に認められたゲームだった。
鬼木達監督就任1年目で川崎フロンターレが初優勝する2017年シーズン。7月8日のアウェイ、サガン鳥栖戦は前半を2点ビハインドで折り返した。
後半スタートから投入された2人は攻撃を活性化させて逆転に成功する。試合後に何気なく掛けられた一言は、これまでで一番うれしい言葉になった。
ん? 憲剛さんが俺を褒めてくれている?
「ノボリ、だいぶ立ち位置とかやるべきことが分かってきたな」
ん? 憲剛さんが俺を褒めてくれている?
耳を疑ったが、中村のほうに目を向けてもとてもジョークを言っているような顔じゃない。途端に、喜びが心の底からこみ上げてきた。
「うれしかったですよ、もちろん。でも一番は、自信になった一言でした。曲がりなりに自分で考えてやってきたことが正しかったんやなって、明確になりました。方向性が見えたなって。
憲剛さんとはプレースタイルが真逆なところから始まったし、突貫小僧って言われてきましたし(笑)、まあ手のひらで転がされているだけかもしれないですけど、憲剛さんにほめられたい、認められたいっていうのは常にあった気がしますね」
チームの目となる、口となる人に憧れるのだから、登里ももう1つの目となり、口となっていかなければならないということ。
だが左サイドバックは車屋紳太郎が不動のレギュラーとして活躍し、登里はバックアッパーの役割とともに攻撃的なポジションでも逃げ切りのクローザーとして起用できる、言わば“使い勝手のいい選手”として重宝されていた。