サムライブルーの原材料BACK NUMBER
「使い勝手のいい選手」を卒業…フロンターレ登里享平が継承する“憲剛イズム”とは
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byHiroki Watanabe/Getty Images
posted2020/12/05 17:01
「憲剛さんがいなくなった後を想像してみたら……」と率直な心境を明かした登里(右)
“使い勝手のいい選手”を卒業しなければ
「この役回りのほうがフロンターレに長くいられるというか、細く長くここでやれればいいくらいの感覚でした。文句を言ったこともないし、それが自分に求められている役割やしって割り切っていたところもありました。
でもチームが2017、18年と連覇したけど、俺、このままでええんか? と。突き抜けたいっていう思いがあるんやないのか? と、そう思うようになっていったんです」
“使い勝手のいい選手”はもはや卒業しなければならなかった。中村憲剛に認められたという自信を、ここで引っ込めるわけにはいかなかった。
「納得しちゃいけない」
2019年シーズンは開幕3戦目の横浜F・マリノス戦で左サイドハーフに入って初先発を果たすと、続くACLグループリーグのシドニーFC戦では本来の左サイドバックで勝利に貢献した。競争のなかでようやく先発の座をつかみかけている感触があった。しかしながら次の試合に向けたトレーニングで再び控えに回ることが分かる。
今までの自分なら、悔しさをうまく噛み殺すことができた。しかしこのときはできなかった。「納得しちゃいけない」と訴えてくるもう1人の自分の声に同意した。ここで引いてしまったら、自分を認めないことになってしまう。彼曰く「明らかに態度に出てしまっていた」という。
鬼木監督がコーチ時代には、出番がないときによく声を掛けて励ましてもらっていた。そんな態度に出れば、指揮官が見逃すわけがなかった。監督室に呼ばれた。
ノボリ、どうした?
ストレートに聞いてくれた。だからストレートに返した。
あのときのことをこう振り返る。