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フロンターレ優勝の「陰のMVP」登里享平 “エンタメ隊長”だけでなく“チームの目”でもあった

posted2020/12/05 17:00

 
フロンターレ優勝の「陰のMVP」登里享平 “エンタメ隊長”だけでなく“チームの目”でもあった<Number Web> photograph by Etsuo Hara/Getty Images

2009年の入団以来、フロンターレ一筋の登里

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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Etsuo Hara/Getty Images

川崎フロンターレのJ1独走優勝の立役者の1人、登里享平選手に話をうかがいました。全2回の記事の前編です(後編はこちら。最終ページ下の「関連記事」からもご覧になれます)。

 お膳立ての人は優勝セレモニーでも、せわしなく動き回っていた。

 キャプテンの谷口彰悟が中央でシャーレを掲げてみんなでひと喜びしたものの、コロナ下の社会通念もあってか爆発が弱い。いやいや、優勝したときくらいもう少し盛り上がってもらっていいんです。なもんで場の空気がイマイチ硬いと感じたのか、“エンタメ隊長”登里享平が出てきて、重量挙げのポーズでシャーレを持ち上げて笑いを取った。

 次の行動によって、彼が別に目立とうとしたわけじゃないことがよく分かる。

 ハットトリックを決めた家長昭博にシャーレを渡そうとした。なかなか前に出てこないタイプ(そう見える)だけに、場を温めておいたのだ。それでも引っ張り出すことに失敗すると、今度は鬼木達監督のところへ。

 これまた渋っている様子がうかがえるが、「はい、オニさん、オニさん!」と何とかバトンタッチに成功。シャイな監督がシャーレを掲げたときが、何だかんだ言って一番盛り上がったのかもしれない。心憎いアシストである。

周りを目立たせる彼を「陰のMVP」に推したい

 11月25日、冬の気配を感じさせる等々力陸上競技場。

 2位ガンバ大阪との直接対決は引き分け以上で優勝となるが、ボールを失ってもすぐに奪い返しての攻めダルマは勝利以外考えていない、いやそれも圧倒して勝ってみせるという決意表明に見えた。

 場を温めたのは、左サイドバックの背番号2だった。ゴール前に走り込むレアンドロ・ダミアンにピンポイントで合わせるクロスで先制点をアシストし、大量5得点の呼び水となった。コーチングの声を途切れさせず、バランスを心掛けながらコントロール役のミッションを完遂した。

 欠かせない名バイプレーヤーである。

 香川西高を卒業してフロンターレ一筋12年、11月で30歳になった。

 準レギュラー的な役回りが長く続いたものの、昨シーズンからレギュラーに定着。周りを見ながら、戦況を読みながら、空気を感じながら。ルーキー三笘薫の八面六臂の活躍も、気が利く人が左サイドの後方でフォローしてきたからこそ。

 4試合を残してのJリーグ最速優勝も、チームがうまく機能することを優先してきたからこそ。MVP候補はその三笘、キャプテン谷口、家長、大島僚太らいっぱいいるだろうが、自分が目立たず、周りを目立たせる彼を「陰のMVP」に推したい。

 彼のお膳立てがあって、今シーズンのフロンターレの圧倒があるのだから。

【次ページ】 ピッチ内でもコーチングの声が圧倒的に多い

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