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NHK杯圧勝した鍵山優真 親に容姿も似て、良い部分を受け継いだ“2世スケーター”の劇的進化

posted2020/12/02 17:02

 
NHK杯圧勝した鍵山優真 親に容姿も似て、良い部分を受け継いだ“2世スケーター”の劇的進化<Number Web> photograph by  Koki Nagahama - ISU via Getty Images,Yukihito Taguchi(in the article)

ライバル佐藤駿らとの争いとなったNHK杯で圧勝した鍵山優真

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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Koki Nagahama - ISU via Getty Images,Yukihito Taguchi(in the article)

 モスグリーンの衣装に身を包み、鍵山優真が氷の中央に立った。少し俯いて最初のポーズをとった瞬間に、頭を小さくふって前髪をはらった。その横顔が、びっくりするほど父である鍵山正和コーチの若い頃に似ていた。

 演技を開始し、冒頭できれいに決めた4サルコウ。そのジャンプの着氷の姿勢も、小さな画面で見ると父と息子のどちらかわからないほど、似ている。ぐっと膝を深く踏み込みこんで着氷の衝撃を逃がし、重心を丹田に保ちながら、すっと伸ばした両腕の開き方の角度。現役時代の鍵山正和も、ジャンプに高さがあり、着氷時の膝、足首の使い方が上手い選手だった。

「スケートのために生まれてきた」とウィアー氏

 11月28日に終了したNHK杯の男子は、一体どうしたのかと思うほど不調な演技が続いた。田中刑事、佐藤駿など、メダルが期待されていた選手たちが実力が発揮できないまま演技を終えた中で、鍵山優真は圧巻のフリー、ローリー・ニコル振付による「アバター」を滑り切った。総合275.87で、2位の友野一希と実に49.25もの点差で初優勝を決めた。

 元全米チャンピオン、ジョニー・ウィアーはNBCのコメントで、「彼はまるで、スケートをするために生まれてきたよう。あひるが(ごく自然に)水に浮かんでいるように」と形容した。同じくコメンテーターである長野オリンピック女王、タラ・リピンスキーは「彼のジャンプ技術は、教本のよう。完璧です」と絶賛。2人とも、鍵山を「ものすごい才能」「間違いなく、次世代のスター」と褒める言葉を惜しまなかった。

多くの2世スケーターたち

 フィギュアスケート界において、2世スケーターというのは少なくない。過去の日本のトップスケーターだけでも、佐藤有香、小塚崇彦、無良崇人などがいる。

 世界で見るとこの数年、シニアで頭角を現してきたイタリアのマッテオ・リッツォもそうだし、鍵山が銀メダルをとった2020年世界ジュニア選手権では、米国代表男子3人ともが2世スケーターだった。中でもマキシム・ナウモフは奇遇なことに、鍵山の父の引退戦であった1994年幕張世界選手権のペアチャンピオン夫婦の息子である。

【次ページ】 2世スケーターの大部分に共通していること

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