フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
NHK杯圧勝した鍵山優真 親に容姿も似て、良い部分を受け継いだ“2世スケーター”の劇的進化
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by Koki Nagahama - ISU via Getty Images,Yukihito Taguchi(in the article)
posted2020/12/02 17:02
ライバル佐藤駿らとの争いとなったNHK杯で圧勝した鍵山優真
2世スケーターの大部分に共通していること
アイスダンスでは、現在活躍中のロシアのイバン・ブーキンは1988年の、米国代表のアンソニー・ポノマレンコは1992年のオリンピック金メダリストの息子である。また11月に行われたロステレコム杯では、ニコライ・モロゾフの娘、アナベル・モロゾフがアイスダンサーとしてシニアGPデビューを果たした。
こうした2世スケーターの大部分に共通しているのは、基礎のスケーティングが上手いことだ。親について歩けるようになるのとほぼ同時に、氷の上に立っていたのだろう。
もちろんこうしたトップレベルに到達できなかった2世スケーターというのも、数えきれないほどいる。オシドリ夫婦として有名だった1988年と1994年五輪ペアチャンピオンのエカテリナ・ゴルディワ&セルゲイ・グリンコフの一人娘だったダリアは、幼少時からスケートをしていたものの、周囲からの期待のプレッシャーに耐え切れず、16歳でスケートを断念している。当然のことながら、すべてのカエルの子がカエルに育つわけではない。本人の意思で他の道を進むケースも少なくないのだ。
父・正和氏になかった優真の長所とは
そんな中で鍵山優真のスケーターとしての成長ぶりは、筆者のように正和氏の現役当時からフィギュアスケートを見てきた人間にとって、たまらなく面白く、楽しみである。
失礼を承知で言わせてもらうと、彼ほど親に容姿が似ていて、良い部分を受け継ぎながらもさらに進化したバージョンであることをわかりやすく見せる2世スケーターは他にいない。
正和氏は優れたジャンパーであった一方で、表現に関してはちょっとシャイで、身体が硬く見えるところもあった。鍵山優真は滑りだけではなく、肩甲骨から腕をのびやかに使って緩急をつけた豊かな音楽表現ができる。直線的な動きだけでなく、身体全体を駆使して自由自在な空間の使い方をする、ジャンプの技術だけでなく、スピンもステップも進化した現在のフィギュアスケートに合わせたオールラウンドプレイヤーといえる。