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ミスしても不思議な魅力…村元哉中・高橋大輔組がデビュー 常識を変えるような“化学反応”が?
posted2020/12/03 17:03
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Yukihito Taguchi
待ちに待った“だいちゃん”のアイスダンスデビューに、会場は嬉しさと感動と、そして笑いの涙で包まれた。
グランプリシリーズ第6戦のNHK杯(11月27、28日)が大阪府で開かれ、アイスダンスの村元哉中&高橋大輔組が、初陣を飾った。持ち前の演技力で観客を魅了し、生き生きと滑るエネルギーを見せ、そしてアイスダンス独特の技では珍しいミスもする。その全てが、氷を愛し、再び世界と戦うことを選んだ34歳の生き様を描くような2日間だった。
高橋は昨年12月の全日本選手権を最後にシングル競技から引退。1月のアイスショー後、2月からアメリカ・フロリダで村元と共にアイスダンスの練習を積んできた。コロナの影響で2カ月ほどリンクが閉鎖になるなど、1分でも多く氷に乗りたい高橋にとっては、時間との闘いとなる日々だった。
もっとも時間がかかる課題とは?
「コーチと、リモートでの練習指導になるなど苦労したこともありました。山あり谷ありでここまで辿り着きました」
試合前日、高橋はそう振り返った。
シングル選手時代の高橋は、2005年NHK杯で史上初の「ステップでレベル4」を獲得したほど、エッジワークや表現力に秀でていた選手。アイスダンスでもその脚捌きが生かせるかと思いきや、そう簡単にはいかなかった。
「まず言われたのが、つま先です。蹴ったあとのフリーレッグの膝が曲がらないようにするのが、シングルスケーターは甘い部分がある。つま先まできっちり伸ばすというのを毎日、耳にタコが出来るくらい言われました」
シングルでは「脚を伸ばす」といえば、膝が曲がっていない程度でもOKだが、アイスダンスの場合はつま先まで伸ばす様に意識し、膝がへこむくらいにしっかり伸ばす。これは25年間、シングルの動きが染みついている高橋にとって、もっとも時間のかかる課題だった。