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【セパ格差危機に提言】先発完投は今や時代錯誤? 10完投以上したエースが翌年低下する数値とは 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byHideki Sugiyama/Kyodo News

posted2020/12/02 11:02

【セパ格差危機に提言】先発完投は今や時代錯誤? 10完投以上したエースが翌年低下する数値とは<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama/Kyodo News

2020年の菅野智之と1958年の稲尾和久。60年以上の時を経れば、野球が変容するのも当然なのだ

 この傾向を見た上でだが――今年、10完投を記録した中日、大野雄大が2021年にどんな成績を上げるのか、気がかりではある。

 完投できるような能力の高い先発投手がいることは、チームにとって有利だ。しかし救援投手がたくさんいる今、完投にこだわる必要性はないと言えよう。

「今の投手の体は弱いから」は本当?

 もちろん現代のプロ野球でも、昭和の稲尾和久のようにチームイニング数の3割を1人で投げる大エースがいれば、チームは圧倒的に有利になる。しかし現実問題として、そんな投手はどこを探してもいないのだ。

 では、そういったタイプの投手がなぜいなくなったのか?

 昭和の大選手たちは「今の投手の体が弱いからだ」と言う。「俺たちの時代のように走りこまないからだ」「昔の投手とはスタミナ、精神力が違う」なんて表現も利いたことがある。

 筆者はテレビや生で、金田正一、米田哲也、鈴木啓示、堀内恒夫、山田久志、東尾修などの大投手の雄姿を目の当たりにしてきた。偉大な投手に対するリスペクトは人に劣らないつもりだ。しかし「昭和の昔の野球の方が、今よりレベルが上」という意見には、異議を唱えざるを得ない。

単純に昔よりも球速が上がっている

 まず、単純に球速が違う。

 スピードガンは1970年代後半からプロ野球で導入された。中日の小松辰雄は1979年に150km/hを記録して「スピードガンの申し子」と言われたが、当時の投手でそれ以上の球速を出す投手はほとんどいなかった。

 金田正一は生前「わしゃ170km/hは出ておったと思う」と言っていたが、それを証明するものはない。

【次ページ】 野手の体格、球場のスケールも大型化

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