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【セパ格差危機に提言】先発完投は今や時代錯誤? 10完投以上したエースが翌年低下する数値とは 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byHideki Sugiyama/Kyodo News

posted2020/12/02 11:02

【セパ格差危機に提言】先発完投は今や時代錯誤? 10完投以上したエースが翌年低下する数値とは<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama/Kyodo News

2020年の菅野智之と1958年の稲尾和久。60年以上の時を経れば、野球が変容するのも当然なのだ

「エースの完投」は優勝に直結せず?

 現代の野球は「先発完投型」のエースがいるだけでは勝てない。2番手以下の先発投手、そして多くの救援投手がそろっていなければ優勝戦線を戦うことはできないのだ。

 さらに言えば、「エースが完投すること」は必ずしも重要ではない。

<ここ5年間の両リーグの優勝チームの完投数。カッコ内は完投数のリーグ順位>
・2016年
 セ・広島 7完投(5位タイ)
 パ・日本ハム 9完投(2位)
・2017年
 セ・広島 4完投(5位タイ)
 パ・ソフトバンク 4完投(6位)
・2018年
 セ・広島 3完投(5位)
 パ・西武 7完投(4位)
・2019年
 セ・巨人 3完投(4位タイ)
 パ・西武 3完投(3位タイ)
・2020年
 セ・巨人 4完投(4位タイ)
 パ・ソフトバンク 3完投(3位タイ)

「先発完投」型のエースがいることと、優勝することは相関関係がないのだ。

 そして、完投数が増えることは、投手が故障したり以後のパフォーマンスが低下するリスクが高まることを意味している。

ここ10年で10完投以上した投手の翌年は

 ここ10年で10完投以上した投手は4人いるが、いずれも翌年は完投数、イニング数が低下している(2011年のダルビッシュは翌年にMLBに移籍したが、参考までに載せる)。

<田中将大(楽)>
2011年 14完投 226.1回
2012年 8完投 173回

<ダルビッシュ有(日→レンジャーズ)>
2011年 10完投 232回
2012年 0完投 191.1回

<金子千尋(オ)※現在の登録名は金子弌大>
2013年 10完投 223.1回
2014年 4完投 191回

<菅野智之(巨)>
2018年 10完投 202回
2019年 3完投 136.1回

 昨年の菅野は腰痛のために戦線離脱して、規定投球回数に届かなかった。

【次ページ】 「今の投手の体は弱いから」は本当?

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