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【初の投手2冠】ソフトバンク石川柊太が語る中日・吉見への恩義と「ももクロ」ライブで考えたこと
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2020/11/14 11:01
11月9日の西武戦に登板し、11勝目を挙げたソフトバンク石川
目指すべきはドラゴンズのエース・吉見一起だ
しかしこの1月、自分の「常識」が間違っていたことを知った。
目指すべきはドラゴンズのエース・吉見一起だと教えられたのだ。
「最初、正直な感想は『え?』でした」
そうだろう。吉見といえば球界随一のコントロールの持ち主だが、球速で勝負をするタイプではない。石川のイメージとは真逆の投手だ。
しかし、たった数分後には、その疑念はすっかり晴れた。わずかなヒントで明らかに体の使い方が変わった。すると、それまで高めにしか行かなかったキャッチボールが低めにバンバン決まる。しかも威力は変わらず、グンと伸びる球筋だ>
とにかく吉見のそばで積極的に多くを学んだ
この年、石川は千賀に誘われる形でアスリートコンサルタントの鴻江寿治氏が主宰する自主トレ合宿に参加をした。
そこでは鴻江氏が提唱する理論に基づいて、自分の体の特徴を知り、それに沿う形でフォームづくりを進めていく。骨盤の開きの左右差により猫背型の「うで体」、反り腰型の「あし体」に分類されるのだが、チェックをしたところ石川は「うで体」、千賀は「あし体」であることが分かった。
つまり、石川は千賀のフォームを真似てしまえば、自身の能力が発揮できないどころか体に余計な負担がかかる危険性があると指摘をされたのだ。
そして、この年の合宿に「うで体」の吉見も参加していたことで、鴻江氏から「吉見投手を参考にすると良い」と教わったのだった。
石川も最初は半信半疑だったが、アドバイスに基づいてキャッチボールをするとすぐに以前の自分との違いに驚いた。それからはとにかく吉見のそばで積極的に多くを学んだ。吉見もまた元々面倒見のいい性格なので、慕って来る後輩は可愛くて仕方なかった。
その結果、それまで一度も一軍登板のなかったピッチャーが、同年のシーズンで先発と中継ぎで34試合も登板して8勝を挙げる活躍を果たしたのだった。