濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
寺山日葵を救った那須川天心の助言とぱんちゃん璃奈の苦笑い “完成品”ではないキック女子たちの今
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byREBELS
posted2020/11/13 11:04
ぱんちゃん璃奈はその高いポテンシャルゆえに試合のたびに悩む。そこが彼女の1つの魅力だ
「私は普通の女子選手にはなりたくない」
試合に対しては、一晩でポジティブに捉え直した。
「ダウンを取りたかったですけど、映像を見たらフェイントを使えていたのと、無駄な動きがなくなっていた。今までで一番いい動きができていたと思います」
組んでの攻防が多かった2ラウンドから、最終3ラウンドに軌道修正できたのも収穫だった。その一方、女子の軽量級でKOが生まれにくいのは当たり前、気にすることはないという声には「私は普通の女子選手にはなりたくない。抜きん出たいです」と答えている。ポテンシャルが高いからこそ自分の試合に納得できず、試合のたびに試行錯誤しては悩む。そういう姿も(現時点での)ぱんちゃんの魅力と言っていい。追いかけがいがあると思わせてくれる選手なのだ。
誰がぱんちゃんを“喰いに”くる?
寺山もぱんちゃんも、今一番見るべきは“成長”だ。一世代上の神村は“天才少女”と呼ばれ、RENAもデビュー当時から才能を発揮してきた。それに対して現在の女子立ち技戦線は“完成品”ではないから面白い。
RISEトーナメントに出場したミネルヴァ王者のAyakaも19歳、10月のリザーブ戦で“魅せる”闘いをした宮崎小雪は17歳。神村の愛弟子、16歳にして4戦4勝のAKARIはトーナメントに強い刺激を受けたようだ。寺山に敗れたsasoriにもまだまだ期待したい。圧倒的なラッシュ力、劣勢でも流血しても笑いながら前に出る姿はインパクト充分だ。
K-1・Krushではハードパンチャーの高梨knuckle美穂がデビュー6連勝。11.3K-1福岡大会では、ノンタイトルながら王者KANAを壽美が下した。REBELSでは今後、誰がぱんちゃんを“喰いに”くるのかが注目される。
団体が違う選手同士の試合を“実現なるか”と煽る気はない。重要なのは同じ世代に将来性のある女子選手が揃っていること。彼女たちの活躍は来年以降さらに本格的になるだろう。黄金時代と言うにはまだ早い。けれどもその予兆は確実にある。