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義足を脱ぐと血だらけ…“世界4位”秦由加子が松岡修造に教える「過酷すぎる」パラトライアスロンの世界 

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松岡修造

松岡修造Shuzo Matsuoka

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photograph byNanae Suzuki

posted2020/11/15 11:00

義足を脱ぐと血だらけ…“世界4位”秦由加子が松岡修造に教える「過酷すぎる」パラトライアスロンの世界<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

これまでに数多くの義足アスリートを取材し、義足の歩行体験もある松岡さんもトライアスロン用の義足に触れるのはこれが初めて

:義足の膝がガクンとなることを「膝折れ」と言って、私たち義足ユーザーにとってすごく怖いことなんです。でも、そもそも膝継手がなければ膝折れの恐怖がありません。

松岡:ただ、膝が曲がったほうが速く走れる気もします。

:陸上競技だとそうですね。でも、トライアスロンのランは5kmという長距離を走るので、スピードよりも膝折れせずに走れるほうが大事なんです。それにランはスイムとバイクが終わった後で足が疲労しているので、義足は軽いほうがいい。膝継手って結構重いので、それがないぶん義足を軽量化できるという利点もあります。

松岡:なるほど、よくわかりました。義足というのは体の一部でありながら、捉え方によると1つの道具であり、僕らテニスプレーヤーのラケットのようなもの。どうやって使いこなすかが大事なんですね。

レースが終わって義足を脱ぐと血だらけ……

 義足を手に取り、まじまじと眺める松岡さん。膝に続いて足の切断部分(断端)と密着する「ソケット」の形状に注目したようだ。それを見た秦選手がすかさずソケットの説明に移った。

:足の切断部分を入れるソケットは義肢装具士さんが石膏で足の型をとって、一つ一つ手作りしている唯一無二のものです。しかも、足の筋肉は形状が変わるので、合わなくなるとすぐに痛みが出て調整が必要になります。つまり義足は一度作って終わりじゃなく、常に「変化」が必要です。特にパラトライアスロンで大腿切断の女子選手は日本に私しかいないので、情報収集や自分に合うものを選択する作業はすごく難しいし時間もかかります。

松岡:競技中も痛みってあるんですか?

:痛いです。だから大腿切断で長い距離を走る人はほとんどいません。日本で10人いるかなぁ?

松岡:そんなに少ないんですか。

:私も3kmぐらいなら痛みなく走れるんですけど、そこを過ぎるとだんだん痛くなって、レースが終わって義足を脱ぐとソケットの中が血だらけなんてこともあります。そういうときは痛くて歩けないので、帰りは松葉杖で帰るみたいな。

【次ページ】 注射器3本分の膿を抜いて、リオ五輪に出場した

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