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<箱根駅伝予選会のヒーロー> “名門”中央大復活へ、「スーパー1年生」吉居大和は最後の切り札か
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKYODO
posted2020/10/20 17:02
箱根駅伝予選会(10月17日)で好タイムを記録した中大の“スーパー1年生”吉居大和
仙台育英出身の吉居は、まだ高校生だった今年3月8日に中大記録会に参加、10000mでトップになった。高校3年生が、箱根駅伝の出場経験もある大学生を負かしたのである。これには部員たちが、驚いた。
そして7月のホクレン・ディスタンス千歳大会で5000m13分28秒31のタイムをマークし、U20の日本記録を更新。9月の日本インカレでも夏の練習の疲れが抜けない状態にもかかわらず同種目で優勝した。
初のハーフマラソンなのに……
藤原監督の「将来はオリンピックを狙える選手ですから」という言葉にふさわしい活躍を見せていた。
ただし、ハーフマラソンとなれば話は別である。特に1年生は10000mまではなんとかこなせても、ハーフではスタミナの強化が追いつかない。
ところが、箱根駅伝予選会で吉居は長い距離への適性を見せつける。
初めてのハーフマラソンだったにもかかわらず、序盤から積極的に前の集団でレースを進め、「終盤は体が動かなくて」とは言うものの、中大内ではトップの1時間01分47秒で総合10位(日本人では6位)に入った。
黒のキャップを太ももに叩きつけた
吉居自身は、レースには悔いが残っているようだった。
「最初の5kmは14分10秒で走りやすいペースで入れたんですが、10kmくらいからペースが落ちついてしまい、『遅いなあ』と感じていて。後続との差が開かなくて、前に出て逃げたいという気持ちもあったんですが、ハーフマラソンは未経験ということもあって、ついていくことを選択しました」
最終的には、追い上げてきた同学年のライバル、三浦龍司(順天堂大)に抜かれ、日本人トップを奪われた形となった。吉居はよほど悔しかったのか、日本テレビのスポーツニュースでは、ゴール後に黒のキャップを太ももに叩きつける様子が映っていた。
ただし、藤原監督はこの走りを評価していた。
「吉居大和には留学生グループでチャレンジさせるプランでしたが、5kmから集団のペースが上がらず、引っ張る場面が多くなり結果的には大きなロスとなりました。5km以降、もう少し速いペースで流れていたら、もう少し気持ちよく走れたのかなと思います」