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<箱根駅伝予選会のヒーロー> “名門”中央大復活へ、「スーパー1年生」吉居大和は最後の切り札か 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2020/10/20 17:02

<箱根駅伝予選会のヒーロー> “名門”中央大復活へ、「スーパー1年生」吉居大和は最後の切り札か<Number Web> photograph by KYODO

箱根駅伝予選会(10月17日)で好タイムを記録した中大の“スーパー1年生”吉居大和

 主将の池田勘汰は、

「吉居に対して期待してしまう部分もあるんですけど、4年生としては頼るのではなく、基本的に4年生が引っ張っていく、前に出ていく姿勢を持っていきたいと思います」

 と話す。陸上はタイムによるマウンティングの世界だから、いちばん速い者は尊敬を集める。学年は関係ない。しかし大学の場合は、4年生が引っ張り、チーム力を高めなければ駅伝での目標を達成できない。

 吉居効果も手伝ってか、今年の中大は選手層が厚くなった。

 予選会では吉居が61分台で走り、7人が62分台、63分台が3人、そして64分台が1人だった。

 しかも、このメンバーは必ずしもベストの布陣というわけではなかった。箱根駅伝本戦を走った経験を持つ2人の4年生をメンバーから外していた。藤原監督は出場した12人の編成の意図をこう明かした。

「控えに回ってくれた川崎新太郎、矢野郁人もひじょうに状態は良かったのですが、新戦力を生み出したい部分もあり、控えに徹してくれました。4年生の心意気に感謝します」

「総合3位」へ 見えてきた中大のオーダー

 箱根駅伝を見据えて、1年生3人を起用したあたり、これまでの中大にはなかった余裕が感じられる。

 予選会の結果を見ると、中大のオーダーがだいぶ見えてきた。

 往路の主要区間に吉居、予選会でチーム内上位に入った森凪也(3年)、三浦拓朗(3年)を起用して流れを作る。特殊区間には経験者がおり、5区は畝拓夢(4年・前回区間9位)、6区に若林陽大(2年・前回区間10位)と計算が立つ。そして復路では、経験豊富な4年生を配置すれば、安定性を期待できる。

 今回、学生たちが目標として掲げるのが、「総合3位」。

 青山学院大、東海大、東洋大、明治大の充実が伝えられるなか、3位に到達するのは簡単ではないが、主力の故障や感染症といったトラブルがなければ、もはや中大はシード権云々のレベルのチームではない。

 ぜひとも、上位戦線を活気づけてくれることを期待したい。

 高校時代、中大の合宿に参加した吉居は、雰囲気の良さに惹かれ、進学を決意したという。名門復活に必要な最後のピースがそろった瞬間だったのかもしれない。

 2021年、箱根駅伝。

 往路、吉居の快走が見られれば、チームは勢いに乗るはずだ。今回の予選会の走りを見る限り、中大の未来は極めて明るい。

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