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<箱根駅伝予選会のヒーロー> “名門”中央大復活へ、「スーパー1年生」吉居大和は最後の切り札か
posted2020/10/20 17:02
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
KYODO
Back on Track.
本筋に戻る、とでも訳せばいいだろうか。
中央大学は、すでに復活していると見ていいのではないか。今回の箱根駅伝予選会での走りを見て、そう確信した。
中大といえば、箱根駅伝優勝は最多の14回を誇るが、2013年に5区の走者が寒風に晒され、低体温症で途中棄権してから歯車が狂い始めた。2015年は10区でタスキを受けた時点ではシード権復活を目の前にしていたが、アンカーにトラブルが発生し、シード圏外へ。不運にも見舞われ、苦戦を強いられた。
シード権を逃がすと、リクルーティングにも影響が出る。私の感触では、中大が狙う有力選手は青山学院、早稲田、明治とかぶることも多く、箱根駅伝の苦戦が陣容にも影響を及ぼし始めていた。
そして2016年、再建の切り札として、フルマラソンの日本学生記録の保持者であり、世界陸上で3回の代表経験を持つ卒業生、藤原正和氏を監督として招聘した。
4年前、まさかの予選落ち
ところが――。
2016年、監督の初年度に中大はまさかの予選落ち。この年は藤原監督が1年生の舟津彰馬(現・九電工)を主将にするなど荒療治を施したが、これが裏目に出た恰好となった。
さすがに翌年からは予選会は難なく通過してきたが、昨年は予選会で10位通過とヒヤヒヤさせられる場面も。
それでも、本戦で見せ場を作った年もあった。2019年には1区中山顕(現・Honda)、MGCにも出場した堀尾謙介(現・トヨタ自動車)というふたりの4年生が先頭争いを演じ、「ついに復活か」と思われたが、3区以降で流れを生かせず、またしてもシード権を逃した。
大学生を負かした高校3年生
「勝ち切れないですね」
全日本の地区選考会、箱根本戦で、この言葉を何度、藤原監督から聞いたことか。
しかし2020年、中大は変身した。変化をもたらした象徴が、1年生の吉居大和である。