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全仏のユルい感染症対策は「結果オーライ」? IOCバッハ会長に東京五輪の開催を尋ねると… 

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長谷部良太

長谷部良太Ryota Hasebe

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photograph byHiromasa Mano

posted2020/10/16 17:01

全仏のユルい感染症対策は「結果オーライ」? IOCバッハ会長に東京五輪の開催を尋ねると…<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

表彰式後、マスク姿で声援にこたえるナダル。選手のほとんどは感染防止対策に努めていたが……

仏テニス連盟会長は自賛するが

 主催者は公表していないが、男子シングルスに出場予定だったフェルナンド・ベルダスコ(スペイン)は大会前の検査で陽性反応を示し、欠場を強いられている。本人は「偽陽性」の可能性を主張したが、再検査は認められなかったという。ただ、これも個別の事案にとどまり、大ごとにはなっていない。

 大会最終日にオンラインで記者会見したフランス・テニス連盟のベルナール・ジウディセリ会長は、感染予防策を講じた上での開催を「勇敢で、勝利の選択だった」と自賛した。

選手たちの声を集めてみると……

 しかし、選手の声を集めると、「結果オーライ」な面もあったのではないかと思えてならない。

 選手とコーチら関係者は例外なく、大会側が指定した2つのホテルのどちらかへの宿泊を義務付けられた。会場以外への外出を禁じることで、全米オープンと同様、外部との接触を避ける「バブル」の状況をつくるためだ。せっかくパリにいるのに、外のカフェでクレープを食べることも、ホテルから見えるエッフェル塔を見物に行くことも許されなかった。

「ここはパリだけど、パリではない。僕らはテニスコートと、山ほどの荷物と一緒に狭いホテルの部屋で過ごすだけだから」

 男子シングルス1回戦を勝ち上がった後、サム・クエリー(アメリカ)が愚痴っていた。他にも同じように不満を漏らす選手は多かったが、誰もが「仕方がない」という様子で制限を受け入れていた。

宿泊ホテルにはマスクなしの一般客

 選手が問題視したのは、厳格な感染予防策が施された全米オープンと比べた際の「緩さ」だった。宿泊するホテルは関係者専用ではなく、一般客がいた。レストランで食事するスペースは分けられていたが、エレベーターで乗り合わせた一般客がマスクをしていないことがあり、女子の加藤未唯は「怖いなと思った」と話している。

 また、配達代行サービスの「ウーバーイーツ」などを利用した際、ホテルの前まで届けてもらった食事は自分たちで取りに行かなければならず、行動が許された範囲外に出る必要があったという。車いす部門女子の上地結衣は「(大会側が)選手に守ってほしいというなら、厳格にやってほしい」と訴えた。

 全米オープンではQRコードを使って選手の体調を毎日管理していたが、「全くそういうのがなかった」と上地は付け加えた。

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