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全仏のユルい感染症対策は「結果オーライ」? IOCバッハ会長に東京五輪の開催を尋ねると…
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byHiromasa Mano
posted2020/10/16 17:01
表彰式後、マスク姿で声援にこたえるナダル。選手のほとんどは感染防止対策に努めていたが……
「東京五輪、本当に開催できるの?」
オンライン記者会見の質疑応答で、筆者は会長に尋ねた。
「東京五輪を100%開催すると、いつ頃までに決める必要があるか。日本の人々は本当に開催できるのか、まだ確信を持てないでいる」
会長は答えた。
「この状況下でも日本で大きなスポーツ大会が開催されている。プロのリーグでは一定の観客を入れているし、(日本以外では)自転車やトライアスロンなどの国際大会が開催できている。私は、疑念を持つ日本の方々を励ますことができる」
質問への直接的な回答にはなっていないが、それはいつものこと。私の後ろに全仏オープンの大会ロゴマークがあることに気づいたバッハ会長は、最後に「ローランギャロスによろしく」と笑顔で付け加えた。
東京五輪・パラリンピック組織委員会は先月、全米オープンの新型コロナ感染予防策について、国枝から意見を聞いた。東京五輪は200以上の国・地域から選手と関係者だけで2万人近くが集まる「地球上で最も複雑なイベント」(バッハ会長)。規模はテニスの四大大会をはるかにしのぐが、「バブル」や新型コロナの感染者が出た場合の対応などは東京大会にとって大いに参考になる。全仏オープンで問題視された点も、「反面教師」になり得る。
コート内では数々の興奮があった中で
不安視される中で開催された全仏オープンは、満員の観客がつくり出す独特の雰囲気こそなかったものの、コート内の白熱ぶりは例年と変わらなかった。
女子は初々しさが残る19歳の新星イガ・シュビオンテク(ポーランド)が四大大会初優勝を遂げ、男子はラファエル・ナダル(スペイン)が決勝で世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)に完勝。34歳になっても衰えない「赤土の王者」らしさを見せつけた。万全の状態ではない中、死力を尽くす錦織の闘志を目の前で感じることもできた。
車いすの女子シングルスでは史上初めて決勝で日本選手同士が対戦し、上地が大谷桃子にストレート勝ち。日本の車いすテニス界にとっても歴史の1ページになった。