Jをめぐる冒険BACK NUMBER
ストッパー酒井宏樹は大収穫も “引き出しにある対応策をすぐ取り出せない” 森保Jの再課題
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images
posted2020/10/10 17:03
カメルーン戦はスコアレスドローに終わったものの、酒井宏樹が3バックの右に入った後半の守備の安定感は上々だった
代表で初ストッパーも酒井は十分に……
1対1の対応や空中戦の強さもさることながら、3バックの一角を十分務められることを証明した。マルセイユではセンターバックで起用されたこともあったが、日本代表でストッパーを務めるのは初めてのことだ。
4バックから3バックに移行する際、これまではセンターバックの選手を投入し、酒井を右ウイングバックに移すのが定番だった。だが、酒井が3バックに入れるのなら、フレッシュなウインガーの投入が可能となる。このオプションを手にできたことが、この日最大の収穫だ。
興味深いのは、フォーメーションの変更が、前線からのプレスにおいても効果的だったことだ。
カメルーンの攻撃の組み立ては、ふたりのセンターバックに中盤の7番が加わり、3人が起点になっていた。それに対して日本の1トップ2シャドー――大迫勇也、南野拓実(鎌田大地)、堂安律(久保建英)の3人で圧力を掛けられるようになったのだ。
「後半は守備のときに、あまりエネルギーを使わないでボールを取れた」
そう振り返ったのは、大迫だ。前線からのプレスに始まり、攻守両面で優位に立てたという点で、カメルーン戦のポイントのひとつがシステム変更にあったのは確かだろう。
前半はなぜプレスがハマらなかった?
では、前半はどうだったのか?
「前半は守備のところでなかなかハマらず、そこで力を使ってしまった」と大迫が悔やんだように、日本のプレスはハマらなかった。それが、ややカメルーン攻勢でゲームが進んだ理由だろう。もっとも、カメルーンの3人によるビルドアップに対して、日本は大迫と南野のふたりで追いかけ回していたのだから、プレスが空転するのも当然だ。
南野が分析する。
「サコ君が前に出て、自分が引いて、(サイドハーフの)律と(原口)元気君がプレッシャーに行くのもいいんじゃないかという話もしましたけど。3枚で回してくる相手に対して、どれだけ素早くシステムを変えて守れるかは、今後の課題のひとつかなと。システムを変えた後半は、前半よりうまくいったと思います」