ラグビーPRESSBACK NUMBER
早稲田大学の1年生が夢見るラグビーW杯 金の卵が手にするのはボールじゃなくて“ホイッスル”
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph byWASEDA University
posted2020/10/08 17:00
早稲田大学ラグビー部の練習でアシスタントレフリーを務める古瀬(1年)。レフリーを経験して、ラグビーの奥深さに魅了された
高校3年で「花園」を経験
そんな超人的ともいえる能力を必要とされるラグビーレフリーだが、その素質が古瀬にはあった。
古瀬のレフリングは関係者の間で話題となり、高校2年で九州協会の推薦を受け、特例的に地域協会主催の地方大会などでレフリーができるB級の資格取得を認められた。
さらに日本協会によるユースレフリーのためのTID(Talent IDentification=人材発掘・育成)キャンプにも参加。高校3年生だった2019年度には、なんと全国高校ラグビー大会「花園」の舞台に抜擢。決勝戦前のU18合同チーム東西対抗戦で、同じ高校生ながらレフリーを務めたのだ。
聖地・東大阪市花園ラグビー場は人生初の舞台だったが、当の本人は晴れやかに「楽しかった」と当時を振り返った。
難易度の高い合同チームの試合を冷静に
「高校1年からレフリーをしてきて、あの大舞台だったので、楽しかったという思いが一番です。選手も高校3年生で、レフリーの僕も高校3年、ということが新鮮でした。高校生の試合ということもあり安全性を重視しました」
しかし古瀬が担当した試合は、安全性の担保が難しい試合だった。
U18合同チーム東西対抗戦とは、単独チームを編成できなかった高校の選手による試合だ。少人数校の高校ラガーにとっては一世一代の舞台であり、だからこそ選手はすべてを出し切ろうとする。多少のケガであれば続行しようとする。
また1日限りの合同チームによる対決であり、どんなプレーをしてくるのか分からない。簡単ではなかった。
「試合前に『危険なプレーはやめてね』と言っても選手は熱くなっています。危険なプレーが起きた時に注意する形でやらなければ厳しいと感じていました。また多少のケガでも『大丈夫です』と言って思いきりプレーしてくる気がしていたので、『あの子だめかな』と感じたらすぐプレーを止めて、ドクターの方に診てもらおうと考えていました。実際に肩が外れた子がいたのですが、プレーを止めて治療をお願いしました」
古瀬は冷静だった。反則をとりながらケガ人に目を光らせ、危険なプレーに対しては堂々とイエローカードも提示した。