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無敵すぎたゆえの苦悩 “5冠後”のバイエルンはどう徹底研究に立ち向かうのか
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/10/06 20:00
あれだけ昨季完成度が高かったバイエルンだが、まさか1-4で敗れるとは……
ゴレツカが開幕前に鳴らした警鐘
シーズン前に、主力に成長したドイツ代表MFレオン・ゴレツカが警鐘を鳴らしていた。
「僕らが考えられること、あるいは考えなければならないことは、自分たちのプレースタイルを変えなければならないかどうか。ここ数カ月間見せてきた自分たちのプレッシングスタイルを、シーズン通して休みなく過密日程の中でやり続けることは困難だ。他の引き出しを開けて、他の戦い方を見つけないと。それが今季のテーマになると思う」
ドルトムントとのスーパーカップでは、前半にはある程度相手に攻めさせて、スペースができたところを攻め切るという形を見せていたが、それは1つのやり方として必要なバリエーションだ。カウンターから先制点。相手が意気消沈している間に2点目。完全に試合を掌握したと思われた。
ただここから少し省エネモードになったところで自分たちのビルドアップでのミスから失点してしまったのはいただけない。2点目もボールロストから2人のCBがセンターを閉じる前に間をホランドに抜かれてしまう。
ノイアーの好セーブがなければ、この時間帯で逆転されてもおかしくなかった。リーグ3節のヘルタ戦も2-0リードのままスムーズに逃げ切れず、追い上げを許している。最終的に終了間際に得たPKをレバンドフスキが決めて勝利をしたものの、4-3は苦しい結果だ。
セビージャが講じたバイエルン攻略策
コンディション問題に加えて、対戦相手はバイエルン対策を練りに練ってきている。セビージャはバイエルン相手に素晴らしい試合を見せた。
守備では選手間の距離を離れすぎず狭まりすぎず適度に保ち、バイエルン選手が後ろでボールを持ったら必ず誰かが寄せて簡単に起点となるパスを出させないようにする。
守備ラインが足を止めずに、小刻みに上下動を繰り返しながら、バイエルン攻撃陣の裏抜けを警戒する。中盤では相手に前を向かせないようにボールが入ったら即座に収縮してボール奪取のチャンスをうかがっていく。
すべてがハイレベルなバイエルン相手だとどれも高い集中力と高いインテンシティでやり通すことが求められるのだが、それをやり通せば善戦が可能だというのを世界中のクラブに示した意味は大きい。