欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
無敵すぎたゆえの苦悩 “5冠後”のバイエルンはどう徹底研究に立ち向かうのか
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/10/06 20:00
あれだけ昨季完成度が高かったバイエルンだが、まさか1-4で敗れるとは……
短期決戦だったCLと超絶強度のスタイル
優勝までかけのぼった昨季チャンピオンズリーグの決勝トーナメントは、新型コロナウィルスの影響で、ベスト8からは本来のホームアンドアウェー形式ではなく、一発勝負のKOトーナメント形式に変更されていた。
試合数が少なく、試合間隔もそこまで空かない。普段は長期スケジュールの中で行われる大会だが、昨季に関してはある意味W杯のような大会となっていた。
ドイツ代表コーチとしてW杯優勝経験もあるフリック監督は、その特性をうまく利用したコンディション作りと戦い方を選んだ。90分間プレスの強度が落ちずに相手を追い込み続けるスーパーインテンシティのサッカーをやり遂げられたことは、CL優勝の大きな要因の1つだろう。
短期決戦ならばそうした要所を押さえた選手起用と交代策が可能になる。アスレティックコーチのホルガー・ブロイヒによるコンディションコントロールは完ぺきだったので、主力選手は全試合で疲れを見せることなくプレーし通すことができていた。
新シーズンに向けての準備期間が……
だが、そうした戦い方がシーズンを通していつでも、どんな時でもできるというわけではない。
コロナの影響で普段より1カ月遅れでスタートしているために、今季のスケジュールはどのチームにとっても過密になっているが、そのなかでもバイエルンは非常に厳しい日程を戦い抜かなければならない。
CL決勝後、新シーズンに向けての準備期間は例年より圧倒的に短い。徐々にコンディションをあげていく、という調整も難しい。
本来プレシーズンに行われるUEFAスーパーカップとドイツスーパーカップがシーズンイン後に組み込まれ、さらに10月と11月には代表戦も組まれている。チャンピオンズリーグも始まる。12月までの3カ月間、ずっと休みなく週2試合のペースで試合があることになるわけだが、それで終わりではない。
今季は冬休み期も短縮されているので、休息を取ることも、改めてコンディションを作り直すための時間も十分にはない。もし今季もCL決勝戦まで勝ち残った場合、5月29日まで実質戦い続けなければならないのだ。