プレミアリーグの時間BACK NUMBER
リバプールとチェルシーに特大効果確実 「2人のチアゴ」がやってきた
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2020/10/04 17:00
チアゴ・アルカンタラ(左)とチアゴ・シウバ。実績十分の2人がプレミアをさらに熱くさせる
慌ててタックルせずに済む察知能力
実際、ウェストブロムウィッチ戦でも、T・シウバのパス成功率は9割を超えていた。
チェルシーは先制を許した数分後に同点の絶好機を手にする。タミー・エイブラハムのヘディングはバーの上を大きく超えてしまったものの、新CBの鋭いフィードに端を発してもいる。
T・シウバにコントロールミスがあった場面では、必死になって身を投げた姿も普段は見られないものだった。
DFの好プレーというと、土壇場でのスライディングタックルを想像する人がいるかもしれない。ウェストブロムウィッチ戦で相棒を務めた24歳のクリステンセンにも、その前のバーンズリー戦でコンビを組んだ22歳のフィカヨ・トモリにも、そういったシーンは見られた。
だが、その手のタックルは、ポジショニングが悪かったことで必要に迫られるケースも少なくない。
T・シウバはというと、慌ててタックルを繰り出す必要などない冷静な守りを身上とするCBだ。機動力が従来のままであるはずはない30代としては、事前に危険を察知して動く力が、より物を言う。
まるでデサイーを思い出す落ち着き
バーンズリーが相手だったとはいえ、T・シウバは移籍後初戦からクールにインターセプトとフィードを繰り返した。その姿には、キャリア終盤に大物DFとしてやって来たばかりのリバプール戦で、ティーンエイジャーながら最盛期とも言えるマイケル・オーウェンとの対峙で「さすが」と感じさせた、マルセル・デサイーの姿を思い出した。
今最終ライン中央にもたらす「落ち着き」は、躍動感のある攻撃を繰り出すとともに、守備の陣形が簡単に乱れるランパード体制2年目のチェルシーにとっては非常に重要だ。
トモリ、クリステンセン、そして、身体能力の高さと昨季からの起用頻度からして、パートナーの第1候補と考えられる25歳のクルト・ズマらが、パニックに陥らずに守るためのノウハウをT・シウバから吸収して成長すれば、移籍金は発生せず、年俸も推定で500万ポンド台(6億円台)とチーム内で特別に高いわけではないベテランの獲得は、費用対効果も十分となる。