プレミアリーグの時間BACK NUMBER
リバプールとチェルシーに特大効果確実 「2人のチアゴ」がやってきた
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2020/10/04 17:00
チアゴ・アルカンタラ(左)とチアゴ・シウバ。実績十分の2人がプレミアをさらに熱くさせる
中盤にも世界最高クラスがやってきた
欲を言えば、リバプールは中盤にも世界最高クラスの人材がほしいところではあった。
3センターの中核と言えるジョーダン・ヘンダーソンは、昨季にFWA(サッカー記者協会)の年間最優秀選手賞に輝いた実力の持ち主。またキャプテンとしてコロナ禍でのリーグ中断中に発揮したリーダーシップの観点からも、票を投じた記者は筆者だけではなかったはずだ。
ただし、純粋にどの強豪でもレギュラーを張れるMFとは言い難い。その中盤に関する「欲」を満たしてくれる選手が、昨季CL決勝でもベストプレーヤーと呼べるパフォーマンスを見せたT・アルカンタラというわけだ。
とはいえ、それほどのトップクラスであっても、生身の人間であることに変わりはない。
コロナウィルス検査で陽性反応が確認され、本稿執筆時点では、移籍先での出場が9月20日のチェルシー戦(2-0)に限られている。
当日はアンカーを務めていたヘンダーソンの怪我で、予定外に早く訪れた45分間だった。しかし、後半の頭から登場したT・アルカンタラの姿は、移籍2日後のプレミア初体験者としては「超人的」だった。
チェルシー戦で見せた「稀有な才能」
毎分2本近いパスを放っていた計算になる絡み具合は、6割以上ボールを支配したチームの中でも最高。後半だけで、フルタイムをこなした相手選手も及ばない75本を通したパスには、意外性が目を引くパスもちりばめられていた。
例えば、デビュー15分目に横パスと見せかけて前方に送った1本である。欺かれた相手は、まだ前線からのプレッシングが徹底されていないチェルシーにあって、即座にスイッチの切り替えができている部類のメイソン・マウントだった。
ゼロトップの前線右サイドで先発していたMFが、パスの受け手との距離を詰めようとした時、T・アルカンタラは顔を右横のファビーニョに向けたまま、右前方で敵の2列目と3列目の間にいたサラーへとパスを届けた。
試合後の指揮官は、新MFが持つビジョンを「稀有な才能」と讃えていたが、まさにその通り。この日はCBに回っていた守備的なファビーニョはもちろん、ロングパスが得意なヘンダーソンや、自ら持って上がれるナビ・ケイタとも異なる展開力が新たに加わったことになる。