酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
ビールの売り子はいるけど、まるで昭和のパ・リーグ 「5000人」観戦に見た原点
posted2020/09/19 10:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kyodo News
この度の新型コロナ禍は、人間が近年経験したことがない災難だった。
終戦前後の野球界について、昔の人が語り継いできたように、私たちも新型コロナ禍で、野球界がどんな風に変わったかを、後世に伝える必要があるだろう。9月19日以降、観客動員の制限は順次緩和されていくが、上限5000人のプロ野球はどんなものだったか、観客の1人として、書いておこうと思った。
関西在住の筆者は、オリックスの主催試合を8月から10試合ほど観戦した。それは今までの「野球観戦」とは大きく異なるものだった。
スタジアムに着くと、まず検温をしなければならない。京セラドームの場合、内野席のお客は、普段は大型バスの発着所になっている1階のスペースで検温ゲートを通らなければならない。ここを通らないと、スタジアムには入れないし、当日券を買うこともできない。
検温完了証にアルコール消毒
そしてゲートを通ると「検温完了証」という小さな紙片を渡される。
また、大阪府が独自に行っている「大阪府コロナ追跡システム」のQRコードを読み込まないといけない。吉村洋文知事の顔を思い浮かべながら、入力を行い、ゲートに向かう。ここで「検温完了証」は回収される。この小さな紙片の色は毎日変わる。ごまかすことはできないのだ。
館内に入るときと、客席の入り口で、アルコール消毒を求められる。スタジアム内はピリピリした雰囲気だ。私はこの緊張感は最初のうちだけかな、と思ったが、そうではなく2カ月近く経ってもずっと続いている。
座席は一列置きに指定されている。また隣のお客とは2席ずつ離れている。ぽつぽつとしかお客が座っていないが、それでも「満員札止め」なのだ。